第34話 ヨリちゃぁん
結婚してマンションに越してからの話です。
私は和室に夫と布団を並べて寝ていて、仕事がある日は大体同じ時間に起き、一緒に家を出るという生活をしていました。
しかし夫はカレンダー通りの定休日で、私は平日と日曜日が休みという出勤体制だったので、朝起きると一人という日もありました。
布団は別にしていたのですが、朝起きると、寝ぼけたまま隣に夫が居るかなんとなく確認していました。
「居ないなあ、もうそんな時間か、起きなきゃ……」
「あの人今日は仕事か……私はもうちょっと寝よう」
そんな感じです。
もちろん、
「まだ寝てるな」
と思う時もあります。
まあなんというか、笑って読み飛ばして欲しいのですが、夫が横に居ると布団越しに背中に身体を寄せてまた眠るような事もありました。冬なんかは寒いじゃないですか。アレです、新婚でしたからね、仲が良かったんですよ。
んで、たまに「あれ? 居ない?」となるのです。
夫が居たからくっついて一緒に寝ていた。が、気が付くと布団は空っぽ。もちろん夫は居ない。
「あれ? 私寝ぼけてたのかな?」
確かに人の体積があったのに、誰も居ない。
夫に聞くと「寝てたから起こさずに仕事に行ったよ」と首を傾げる。
「私が二度寝してその時に夫が起きたのかな?」
と、特に気にとめては居なかったのですが、そんな事が数回ありました。
そしてある朝の事。
私はまた目覚めて、手探りで夫を探します。
どうやらまだ眠っているらしい。
そう思ったのも束の間、何となく直感と言うか、
「これ、やっぱり夫は居ないんじゃないかな?」
と思いました。
なんか変だなあ……と思いながら、まだ微睡んでいた時です。
「ヨリちゃぁん」
野太い男性の声が、ねっとりと上から降ってきました。
結構大きな声で、笑っていると言うか、ニヤニヤして見下ろしながらベッタリと語りかける、そんな声でした。(実際には本名を呼ばれていました)
驚いてバッと起き上がりましたが、夫も居らず、もちろん声の主も居らず、私だけが布団に身を起こして呆然としていました。
とにかく気持ちが悪い、そんな感覚を覚えています。
私の夫は私の事を「ヨリさん」と呼びます。「ヨリ」はペンネームなので実際には本名を呼んでいるのですが、「ちゃん」を付けて呼ばれた事は殆どありません。
私の名前を知っていて、しかも夫婦の寝室に入り込んで来る男性。
生霊、死霊、色々考え方はあると思うのですが、少なくとも全く聞き覚えが無い声です。
幸いその後は「居たはずの夫が居ない」事も、「何かに名前を呼ばれる」事も無いのですが、とにかく自分の名前を得体の知れない相手が認識しているのが気持ち悪くて怖かった、そんなお話です。
【実話怪談】昔、こんな怖い事があった 縦縞ヨリ @sayoritatejima
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。【実話怪談】昔、こんな怖い事があったの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます