白蛇様とジャンヌ・ラ=ピュセル
グイ・ネクスト
第1話 修道院で働いています。
八歳になる私の名前はリアーネ。家名なんて物は私には無いわ。だって孤児だもの。五歳の時にこの修道院に拾われて、掃除したり、寄付をもらったり、みんなとスープを作ったり、たまには野原で花の中に埋もれたり、日記をつけたりして過ごしているわ。そう。どこにでもある女の子のお話。の、はずだった。
今日の朝、洗面所で顔を洗っていたら、修道院の玄関が勢いよく開いたの。もうみんなびっくりしてあたふたあたふた。だから私は仕方なく?玄関に行ったの。
そこには頭に角のある紫髪の男の子がいたの。二本の角。全体的に真っ赤な目。肌は青く、上半身は裸。右肩から斜めに剣で斬られたような大きな傷。赤い血が溢れ出している。(血の色は同じなんだ)下は黒くて動きやすいズボンを履いているわ。えーっと、怪我人だから助けてあげないと。私は金髪の肩まである髪を青いリボンで首元でくくり直す。「今、回復魔術を使うからね」と、角のある魔族の男の子の傷の上辺りに手をかざす。傷を触らないようにそっとね。
くしみたま、さきみたま。
守りたまえ、さきわえたまえ。
白蛇様。
修理していただいて、ありがとうございます。
お助けいただき、ありがとうございます。
生かしていただいて、ありがとうございます。
私の手から白い蛇が、白蛇様が光となって、魔族の男の子を治していく。
「ほら、あっという間でしょ」と、私はガッツポーズをとる。
「な、ここは?」と、角のある魔族の男の子は目を覚ました。
「ラクス修道院よ。私はリアーネ。よろしくね」
「ボクは・・・ごめん。名前も分からない。ボクは誰だったんだろう」
「リアーネ!」と、院長先生がメガネを揺らして怒っている。
「怪我人だったので、回復魔術を使いました」と、私は軍人と同じように敬礼する。
「ふぅ・・・。あなたのはそもそも異界の何かであって、魔術ですら無いわ。そもそもあなたには魔力なんて無いんだから。まあ、それよりも、あなたの助けた相手は魔族よ。魔族は人類の敵なのよ。どうするの?」
「でも、記憶を失くしているようですし、なんとかなりませんか、先生」
「じゃあ、魔力封じのペンダントを買ってくるわ。そうすれば角も隠れて、肌の色だって変わるわ。お代はもちろん、あなたのお小遣いからね。少なくとも半年はお小遣い無しよ。それともどこかで多額の寄付でも見つけてくるなら、その時点でお小遣いを復活してあげてもいいわよ。わかったわね!」と、院長先生はそれだけ言うとさっさと歩いて去って行った。
「えへへ。良かったね。でも名前が無いと不便だね。なんて呼ぼう?」
「ボクの名前?君が付けてくれるならそれに従う」
「ほんと?じゃあ・・・ロキ。ロキって呼んでもいい?」
「うん。いいよ。ロキ。うん、なんかいいね」
「ありがとう。私はリアーネ。よろしくね」そんな何でもないやり取りだったのに。相手が魔族だからか、私の額と右の甲に痛みを感じる。「なんか竜が出てきたね」と、ロキは言う。よく見ると、ロキにも額と右手の甲に絵本で見たドラゴン、竜の紋様が現れる。大きな翼を広げていて、口から炎を吐き出しているのがわかる絵だわ。ん。何だろう、これ。まあ、気にしても仕方ないよね。ロキの手を引っ張り、私は修道院を案内する事にした。
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