第2話 あれ?ラ=ピュセル村って聞いた事あるなぁ
私は寄付してくれる人を探して、過去の記憶にあったラ=ピュセル村に来ている。ロキと一緒に。ロキは首からぶら下げている魔封じのペンダントが効果を発揮したのか、角は隠れ、青かった肌は私と同じ人間の肌色になっている。私が住んでた世界ではドンレミ=ラ=ピュセル。フランスという国の村だったはず。そう、今のこの世界は、『もう一人のジャンヌ・ダルク』って言うゲームの世界にそっくり。選択肢を選んで行くアドベンチャーゲームで、主要な人物のバッドエンドを全部見ないとヒロイン、ジャンヌが生き残れるツルーエンドに辿り着けない激ムズなゲーム。ってこれ、何の記憶だろう。
私はリアーネ。八歳で、修道院で暮らしている、どこにでもいる女の子のはず。額と右手の甲に竜の紋章が出て来ちゃったけど。
入口に教会がある。古い形の教会だけど、それなりに大きい。あっ鐘がなる。初老のお爺さんが鐘を鳴らしているわ。うーん、寄付してくれる人どこにいるのかなぁ。半年以上お小遣い無しは辛すぎる。ロキと出会えたのは嬉しいけど。と、ロキを私は見てみる。「ん?何?」と、ロキは口笛を吹いて歩いている。
院長先生は何だかよくわからない事を言っていたわね。従属の契約をしてしまっているから、その魔族はあなたが責任を持って管理しなさいって。
そんな契約いつしたんだろう。うん、分からないわ。
「ねえ、ロキ。寄付してくれる人ってどんな人かな」
「ん。とりあえずここの村長の家でも行ってみる?確か村の名前と同じ苗字を名乗っていると思うし。多分、あの一番大きな家じゃないの?」と、ロキは教会から右斜め前にある大きな屋敷を見る。配置的に街の中央にあるって感じね。確かにそうかも。あの家に行ってみようかな。あっ、腰まである赤毛の女の子が出てきたわ。
ここがゲームと同じ・・・似たような世界なら、彼女が聖女ジャンヌ・ラピュセルのはず。確か大天使ガブリエルの声を聴いたとか。白いエプロン姿でこっちに来てる。うん?こっちに来てる?
「ちょっと!」
「は、はい」
「教会の鐘が聞こえなかったの?お祈りの時間でしょ。それも貴女、修道院から来ている修道女なんだから。」と、腰まである赤毛の女の子は言う。
「うん。えっとそうだね。教会、行きましょ」と、私は答える。
「おいおい。ちょっと失礼だろ。ボクはロキ。コイツ、リアーネの護衛だ。まず名前を名乗れ」と、ロキはやってしまっている。
「ふん。
「私はリアーネ。ラクス修道院から来たの。教会には怪我をした人とか、来るのかな。来るならいいんだけど。」と、私は言う。怪我を治療したら、寄付を請求できるからね。と、ジャンヌに聞いてみる。やっぱり聖女になるジャンヌなのだろうか。
「お父さんが右腕を怪我したの。昨日、近くの山で現れた大きなボア(猪)を止めるのに骨折したみたい。まさか治してくれるの?
「そうなんだ。嬉しい。治療するわ。教会にいるのね。やった。嬉しいわ」
「魔力は感じないけど・・・・」と、ジャンヌは疑いの目を向けてくる。
「うん。なんか私の回復魔術はちょっと変わっていて。うん」と、私は言う。
「お父さんは教会にすでに行っているわ。早くして」と、ジャンヌは私の手をつかむと走り出す。「ちょ、ちょっと」と、私も走り出す。
ジャンヌに連れられてやって来た教会は修道院と比べて、小さな教会だった。入って行くと、右腕を抑えて、目を瞑っている男性が座っている。「お父さん」と、ジャンヌは近づいていく。大人だから金髪だわ。「おお、ジャンヌか。どうしたのだ」
「こんにちは」と、私は挨拶する。
「えーっと君は?」と、ジャンヌのお父さんは私を見る。
「ラクス修道院から来たリアーネよ。お父さんの腕を治してくれるみたいなの」
「みたい?それは確定では無いのか・・・」と、ジャンヌのお父さんは喜びそうになってすぐにがっかりと下を向く。
「えっと・・・とりあえず、治しますね。『この命を捧げます。白蛇様』」と、右腕の上あたりに手をかざす。白蛇様が現れ、腕の中へ入っていく。
「おわわわ、はぎゃ」と、ジャンヌのお父さんは変な声を出す。
「お、お父さん」と、ジャンヌは叫んでから、私の胸ぐらをつかむ。
「大丈夫よ。ちゃんと治したから」と、私はジャンヌを見つめる。
「ジャンヌ。手を離してあげなさい。その子の言っている事は本当だ。ほら、右腕はこの通り痛みも無いし、軽い。ホントにウソみたいな事が起きている」と、ジャンヌのお父さんは言う。
「そ、そんな。リアーネ、貴女。異界の言葉を話したわね。女神ガブリエラ様以外を信仰しているなんて邪教の徒なの。」
「・・・・・・女神?大天使様では無くて???」と、私は聞き返す。
「何を言っているの?女神様は四枚の大きな輝く翼を持たれているのよ」
「うん。だから・・・そう言うのを大天使って言うんじゃ」
「言わない。女神様は女神様よ。ううう。どうして治ったの。
「あ、あの私はリアーネと言います。ジャンヌのお父さま。治療に対する寄付をお願いします」と、私は頭を下げた。
「あ、ああ。家まで来てくれるかな。私はジャック・ラ=ピュセル。よろしくな」
「はい、こちらこそ。あれ?そう言えばロキがいない。」と、私はジャンヌを見る。
「ロキなら、教会の門にいるわよ。ほら・・・呼んであげたら」
「うん。ロキ!ここよ、入って来て」
「お、おう」と、ロキは私の側に来た。
あ、そうか。ロキは魔族だから・・・人間の家に入るには許可がいるんだわ。
「ごめんね、ロキ。」と、私は謝っておく。
「べ、別にいいよ。ボクは気にしていない」
「そう。ありがとう。それじゃあ、屋敷まで案内お願いね、ジャンヌ」
「ふん。邪教の徒なのが気にいらないけど・・・ついてきなさい」
「悪気は無いんだ。ジャンヌの事、許してやってくれ」と、ジャックさんは頭を下げてくる。「ええ、大丈夫です」と、私は笑顔を返す。
私たちはラ=ピュセル家に案内される。ロキの予想は当たっていた。教会から右斜め前の家でした。
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