第1.5話 俺の名前は魔王クロムウェル。 

異世界の覇権を賭けて、今日も女神のヤローと戦って来た。あの女神、どこで剣を学んだのか、知らないが、俺の剣を受け流して、返し技の切り上げで斬って来やがった。剣に関しては俺の方が上手だったはずなのに。どうなっているんだ。はぁはぁ。

ダメだ。もう、これ以上は・・・・・・。ってここ、あの女神を信仰している教会じゃねぇか。なんて場所に来てしまったんだ。だが、もう力はでねぇ。

俺もここまでか。教会の扉は俺がもたれると、勢い良く開いた。

両開きの扉だったようだ。俺の血が床を汚す。「きゃーーーーー魔王クロムウェルよ。どうして女神様と戦っている魔王がこんなところにいるの。それもこんな辺境の街に!」と、修道女の一人が叫ぶ。「は、早く魔力封じの儀式を」修道女たちが慌ただしく動き出す。はっ、魔力封じか。やっぱ俺もここまでか。と言うか・・・別の気配を・・・????


何だこいつは?

俺が怖く無いのか?


 金髪の髪を青いリボンを使って、首元でくくっている。翡翠の瞳をしていて、さっきまでの修道女たちと比べて、幼い。何だ、何か唱えたぞ。

異界の言葉だ。全く意味が理解できない。

うん?白い蛇?何だ俺の体に、グワァああああああああ。


「な、ここは?」と、お・・・ボクは目を覚ました。

「ラクス修道院よ。私はリアーネ。よろしくね」

「ボクは・・・ごめん。名前も分からない。ボクは誰だったんだろう」

「リアーネ!」と、大人の修道女?がメガネを揺らして怒っている。

「怪我人だったので、回復魔術を使いました」と、リアーネと呼ばれた彼女は軍人と同じように敬礼している。おかしな子だ。

「ふぅ・・・。あなたのはそもそも異界の何かであって、魔術ですら無いわ。そもそもあなたには魔力なんて無いんだから。まあ、それよりも、あなたの助けた相手は魔族よ。魔族は人類の敵なのよ。どうするの?」ボクは魔族なの?と、大人の修道女?の言葉が気になる。

「でも、記憶を失くしているようですし、なんとかなりませんか、先生」

「じゃあ、魔力封じのペンダントを買ってくるわ。そうすれば角も隠れて、肌の色だって変わるわ。お代はもちろん、あなたのお小遣いからね。少なくとも半年はお小遣い無しよ。それともどこかで多額の寄付でも見つけてくるなら、その時点でお小遣いを復活してあげてもいいわよ。わかったわね!」と、先生と呼ばれた女性はそれだけ言うとさっさと歩いて去って行く。そんな事よりもリアーネがこちらを見ている。

「えへへ。良かったね。でも名前が無いと不便だね。なんて呼ぼう?」

「ボクの名前?君が付けてくれるならそれに従う」え?あれ。それって結構ヤバイ事になるような。と言うか、体縮んでいる。え?ボク、本当はもっと身長があったのかな。うーん。

「ほんと?じゃあ・・・ロキ。ロキって呼んでもいい?」

「うん。いいよ。ロキ。うん、なんかいいね」

「ありがとう。私はリアーネ。よろしくね」

額と右手の甲に痛みを感じる。これは従属の契約。な・当然だ。魔族と人間なのだから・・・こうなるに決まっている。名前を貰ったんだからな。何を考えている、お・・・ボク。あれ?まあ、今は体も子供だし。いいかな。しかし、従属の契約。これは大人の先生って呼ばれた人にアピールしよう。きっと取り計らってくれるはずだ。

「なんか竜が出てきたね」と、ボクは言って見た。きっと彼女は知らない。現れた竜の紋様をまじまじと見つめている彼女では。しかし、竜か。ボクは王族だったのかな。ヤバいな。女神に利用されたらどうしよう?うん?女神って誰?知らないな。そうこうしていると、リアーネがニッコリと笑ってきた。リアーネはとても自然に手をつなぎ、引っ張り、ボクを修道院の中へ連れ込んだ。まあ、今はいいか。もう彼女には逆らえないのだし。

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