第6話 湖に行ってみれば。トカゲさんたちと
朝ご飯の準備をしていると、水に魔力、魔素が混じっていると報告があった。私の暮らしているラクス修道院は、岩山と同じ北東に五分ほど歩いて行ったところに精霊が住む大きな湖から水を引いていると、聞いている。
「それでは見て来ます」と、私とジャンヌは護衛にロキ、リンとネスを連れてやって来ていた。湖は精霊の湖などと呼ばれていると、聞いている。白い霧の立ち込める向こう岸の見えない大きな湖だ。水をすくってみる。
確かに濁っている。精霊はどこへ行ってしまったのか。魔物達が集まったから瘴気が濃くなって、濁ってしまったのか。原因は分からない。私個人に浄化の力は無いし。
こういう時は基本に戻る。
「
守り給え、
白蛇さま」
私はそのまま湖の中へ足を踏み入れる。不思議と水面の上を歩いている。白い霧は私が歩いた場所へ、私へ、吸い込まれるように集まり、消えて行く。
数十体のリザードマン。トカゲの顔を持つ、二足歩行の魔物が集まっている。
「こんにちは。何を求めているの?」と、私は聞いてみる。
「△%$(魔物の言語でよく分からない)」と、リザードマンの一人は言う。「白蛇様、白蛇様、白蛇様」と、私は唱える。【白き光】と。白蛇様に翻訳されたようだ。こんな事は初めてだわ。リザートマン達を見ていると白蛇様が一斉に包みこむ。
「白き光だ。」「白き光だ」と、リザードマン達はざわついている。
白き光。死の瞑想をすると必ず最後に見る光景。大きな大きな白い光の玉。どう言うわけか。それが本体だと認識できる。優しいやさしい愛と慈悲であると理解できる。
自分の存在を無償で認めてくれていると理解できる。
リザートマンたちは白き龍となって空へ昇って行った。「白蛇様。本体に巡り逢えたのね・・・ずっと魔物になってまで探していたのね」と、私の頬を熱いものが流れ落ちていく。
「白蛇様、白蛇様、白蛇様。空へ昇って行ったリザートマン達を
プラチナの髪をしていて、金色の瞳、白い肌、白のワンピースを着ていて、肩甲骨のある辺りから翼が生えていて、四対の翼は白く光って輝いている。頭上には金の輪。大天使ガブリエルこと、この世界では女神ガブリエラ様が再び現れる。
「また会いましたね」と、私はにっこりと微笑む。
「大神様の
まあ、いいけど。
ジャンヌたちのいる場所へ戻ろうとして女神様に転移魔法を教えてもらった。私は気づかないうちにかなり湖の中まで歩いて来ていたみたいだ。「幸魂、奇魂。守り給え。幸え給え。白蛇さま」と、基本の祈りと帰る場所をイメージすればいいみたいだ。私は長い赤毛と青い瞳の女の子、ジャンヌをイメージした。
「きゃ」と、ジャンヌが驚いている。私が突然現れたみたいに見えたんだろう。
まあ、実際そうだけど。「ごめん、ごめん。ちょっと女神様の結界を張ってもらったから。うんうん」と、私はジャンヌの青い瞳を見つめる。ジャンヌは少し怒ったように頬を膨らませて、こちらを睨んでいる。
「リアーネ!」と、ジャンヌは叫び、私に抱きついてきた。「うあぁああああああ」と、ジャンヌは泣いている。あれ、そんなに悪い事をしてしまったのかな。ロキは呆れた顔をして私を見ている。ジャンヌの護衛の二人は苦笑いをしているように見える。「えっとロキ?」と、私は聞いてみる。
「ボクとしても突然湖を歩いて行ってしまい、びっくりだよ。仮にも護衛なんだからさ。まずボクでしょ。ボクに偵察を頼むとかさ。そういう順序って奴大切だと思うけど。そうへんはどうなの?」と、ロキは説教のつもりなのか怒っているように見える。私はちょっとしょんぼりして下を向いて。
「ごめんね、ロキ。とりあえず湖は浄化したから・・・・・・。偵察できるならお姉様方を偵察してきて欲しい。あなたを復活させたい部下たちに帰り道とか邪魔されちゃうと可哀想だし。ね、ロキ。こんな風にあなたを頼ればいいのね」と、謝ってからロキを見た。
「・・・・・・え。いや、その偵察は行かなきゃダメか。」と、ロキは聞いてくる。
「ええ、もちろん。朝ご飯を食べてからでもいいわよ。浄化した水で作ったコンスメスープとパンだけど。それとも他に当てでもあるの?」と、私はロキを見る。
「いや、そんな当てあるわけないだろ。パンか。まあいい。それでいい。それ食ってからでいいんだな。それなら偵察してきてやるよ。ちなみにホントにボクの部下たちに出会ってしまったら逃げて帰るからな」と、ロキはまた怒っている?それともめんどくさいのだろうか。
「逃げて帰ってどうするの?仮にも元部下なんだから・・・説得するとか、こちら側に寝返りさせるとかね。ほら、いろいろあるでしょ。とにかくお姉様方の荷物とお姉様方本人に傷をつけないように。ね、ロキなら簡単でしょ。魔族の王だったのだから。仮にもね。」と、私はロキに言ってみた。
「ああ、分かったよ。護衛して無事に連れ戻せばいいんだな。それでいいだろ」
「うん。それでいいわよ」と、私はにっこり笑う。
「リアーネ、リアーネ」と、ジャンヌが私を呼んでいる。
「どうしたの?」と、私はジャンヌのいる方を振り向く。
ジャンヌは青い花を手に持っていた。花の名前は分からない。バラに似ているけど。青いバラなんて聞いた事ない。それともこれは私の前世、異世界の記憶なのかも。
そう、この世界では当たり前に咲いている花なのかもしれない。よく見るとジャンヌの後ろ側、私が浄化した湖のそばにたくさん咲いていた。綺麗。きれい。とても。
私はついつい見惚れてしまう。ジャンヌが横に来る。
「ね、綺麗でしょ」と、ジャンヌがにっこりと笑う。いい笑顔ね。
「うん、いいね」と、私も笑い返す。東の離れの花瓶に飾ろう。
名も無い青い花を。
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