ゲーム×ト×セイシュン×ノ×カケハシ
- ★★★ Excellent!!!
『書架に飾る』は、ただのVRMMORPGの物語に収まらない。むしろ、仮想世界を舞台に青春を描き、現実との接点を織り交ぜた「成長の旅」を体感させてくれる稀有な一作だ。白ウサギ=「MoonEaterRabbit」に命を狙われる主人公佑真の緊迫感あふれる初冒険から、リアルなNPCリリスとのやり取りや、教会掃除クエストに至るまで、思わず「これ本当にゲーム?」と錯覚するほどディテールが細やか。達也との友情や家族との交流も、平凡な日常を切り取る一方、VRの中で佑真が直面するドラマがリアリティを増幅する。
また、初心者に清掃を提案するギルド受付のNPCリリスが、どこか不穏な伏線を漂わせるあたりは、筆者の巧妙な遊び心を感じずにはいられない。「青春×冒険×仮想」という三重奏が織りなす本作、次のクエストでは何が待ち受けるのかを想像するたび、現実と仮想の境界線が曖昧になり、読者自身がもう一人の冒険者として物語に参加している錯覚を覚えるだろう。ゲーム好きはもちろん、仮想世界を通じて「自分」を見つめ直したい全ての人におすすめしたい。