『【最終章】ボクらは庭師になりたかった ~女子高生の夏波と冬凪が未来の神話になるとか、草生える(死語構文)』は、青春と神話が巧みに交錯する物語であり、私たち読み手を辻沢という独特な町の世界観に引き込む魔力を持っています。廃墟の日本庭園「六道園」を復元しようとする夏波と冬凪の努力は、単なる園芸部の活動を超え、時間や伝説、そして人の思いを紡ぐ壮大な冒険へと変わっていきます。吸血鬼伝説や「年を取らない町長」といった要素が、現実と非現実の境界を曖昧にし、辻沢という町を舞台にした新たな神話を創り出しているのが魅力的です。
また、「浄血」やカルト集団「チブクロ」の暗躍というスリリングな要素が、物語にスパイスを加えています。一方で、冬凪の二重人格という個人的な葛藤が物語に深みを与え、単なる冒険譚では終わらない人間ドラマを描き出しています。
六道園を復元するというテーマは、過去と未来、伝統と革新の調和を象徴しており、読み進めるほどに「私たちの未来に必要な庭師とは誰か?」という問いが心に響きます。青春の爽やかさと神話的スケールが融合した本作は、現代の読者に、未来に紡がれるべき物語の可能性を提示することでしょう。
このタイトルから園芸女子がメタバースで庭師になった話、青春と泥と汗のーーーー、みたいなものを想像していたら大間違い。
これは土着の匂いがぷんぷんするfolkloric adventure fantasy! 辻沢という縁(エニシ)にまみれた希有な土地にしか花咲かないドロドロした美しく不思議な世界感。鬼子や鬼子使いや屍人や吸血鬼が跋扈するけど、メタバース中毒ぎみの女子高生はあくまで軽い会話の今どきノリ。いわくをかかえた少女達が友情てんこ盛りで土地のナゾに迫っていく。
発掘現場のお手伝いとか、知らない世界の描写がきめ細かくて読み応えあり。そして、たたみかける♪ゴリゴリーン なんでかタメ口の管理AIと、バス内の怪しい放送がとっても楽しい。
ああ、この面白さをどう伝えたら良いのか。レビューが苦手な私は頭を抱えるのみ。辻沢シリーズの一角をなす作品だが「辻沢のアルゴノーツ」を読まなくても、きっと楽しめる。でも、読んでいると「ああああ、○○○ちゃん~~」とかキャラに再開できたうれしさに身をよじらせて悶絶できる。(個人の感想です)