芭蕉の弟子のひとり、去来は京都の嵐山にまだ名前を付けていない草庵を構えていた。ある秋の日、去来に草庵の庭に実った柿を売ってほしいと申し出る商人が現れた。一つの草庵の名前の由来から、過去と未来までを一望した、歴史短編小説。舞台はほとんど変わっていないのに、長い旅から帰ってきたような、不思議な読後感がします。例え知らない相手でも、言葉を交わし、その心を知る。その瞬間に、インスピレーションが生まれるのは、今も昔も変わらないものだと思います。
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松尾芭蕉の、その弟子にまつわるエピソードです。蘭学なども交え、御洒落な雰囲気をかもしつつ、京都の秋の連想させる描写が実に秀逸。物語自体がひとつの歌のようにさらさらと詠めてしまいます。この秀逸な物語、是非ご賞味あれ。
四谷軒様のライフワークとも思える芭蕉シリーズでまた新たな傑作が今回は芭蕉の弟子の去来が主人公です去来の人となりを思わせる軽妙でありながら味わいのある語り口に惹き込まれました!去来と柿の木…いい取り合わせです