6話
大歓声がグラウンドを包み込む。
太陽が燦々と輝き、日焼け止めクリームを塗って良かったと思う。
そんなことをテントにいながら思っていた。
体育祭という、大型イベントが行われている。
遡ること2週間前。
みんなで話し合って誰が何の種目に出るのかを決めている時のこと。
その時に玉転がしの種目で、急に振り向いた
目の前に、近くで、向き合う私と彼。
心拍数が上がっているのが分かった。
走っていないのに。なんなんだ。
「鹿島さん、一緒にどう?」
「へ?」
間抜けな顔で変な声が出てしまった。
「玉転がし、一緒に出ようよ?」
大野君が私を誘っている。
頭の中が混乱しかけたから頭をブンブン振った。
冷静になった所で「うん」と一言。
すると「分かった」とニコッと笑って大野君は「僕と鹿島さんで出るよ」とみんなに伝えた。
すると快くみんな賛成して、私達ともう4組が決まったのだった。
「よろしくね」
爽やかな微笑みに圧倒されつつ「よろしく」と言った。
そして今はというと、そろそろ出番が来るからテントの下にいて休んでいたのだ。
二人三脚だと身体が密着するから余計に倒れそうになるが、玉転がしなら手が触れないようにすれば楽勝だ。
練習の時、触れないように触れないようにと気を付けていたから、本番でも大丈夫だろう。
と、私は思っていた。
この時までは。
※
「緊張するね」
「そうだね」
アンカーに繋げる私と大野君は応援しながら、のんびりとした会話をしていた。
「よし、立とう」
「うん」
いよいよ自分達だ。
大玉がコロコロと迫ってきた。
「はい、よろしく!」
男子が大野君とハイタッチ、私は女子とハイタッチして大玉を預かった。
「OK!行こう鹿島さん!」
「うん!」
背中を押されたような、勇気をもらったような気がして、自信を持って出来ると、根拠のない自信が湧いてきた。
「「せーの!!」」
1、2、1、2…!!
掛け声を揃えて大玉を転がしていく。
リズムに乗ってくるとテンポを上げていく。
練習通りだ、少し安心する。
加速していると、アンカーのいる所に辿り着いた。
私は女子と、彼は男子とハイタッチして、アンカー2人は物凄い速さで大玉を転がしてゴールした。
1着だったから勝てた喜びが溢れ、気づいたら大野君と両手でハイタッチしていてた。
「あっ…その…」
顔が熱くなるのが分かった。
すると大野君は慌てていた。
「ん?どうしたの、熱出た!?」
違う、と言えないまま、私は一目散に控えテントにダッシュしたのだった。
大野君、置いてけぼり、ごめんなさい。
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