2話

 まだ連絡は来ていない。

 もう木曜日だ。

 焦る気持ち、不安な気持ちになる。

 明日で決まる。

 脈はあるのか、ないのかー…。

 一睡も出来ずに朝を迎えた。



 帰りの会が終わって直ぐのことだった。


鹿島かしまさん」


 ついに、きたー…。

 私は心の中で小躍りする思いになる。

 だが、どこか疑っていた。

 断られるかもしれない、つまらなかったと言われて本が返ってくるかもしれない。

 勝手に不安を募らせる。


「本、ありがとう。面白かったよ」


 優しい微笑みで本が返ってきた。


「うん」


 情けなくなる。一言しかいえない。

 緊張で言葉が出てこない。


「じゃあまた」

「えっ…」


 彼は教室を出た。

 返ってきたのは本と感想だけ。

 手紙には触れることはなかった。

 泣きたくなった。でも、まだ教室には人がいる。

 グッと涙をこらえて自分も教室を出た。



 部屋で1人泣いていた。

 ダメだった。

 頑張りが無駄になる。

 初恋なんて、上手くいかないものだ。

 告白していないのに、勝手に振られて絶望している。

 もう1度、机に置いた本を手に取る。

 パラパラ捲ると、ぽとん、と何かが落ちた。

 拾うと2つ折の紙だった。

 開いてみると、手紙だった。



 鹿島 あおいさんへ

 はじめまして、なんておかしいね。

 でも、まだ出会ってというか、同じ学校、同じクラスになって、まだ1ヶ月しか経っていないから自己紹介するね。

 僕は大野おおの敏幸としゆき

 10月生まれのB型。

 本は好きだから、机の中に見知らぬ本があってびっくりしたよ。

 読んでいくと手紙が挟まってあって、さらにびっくりしたな(笑)

 本を読むのは早かったけど、手紙の返事に時間をかけてしまってごめんね。

 あまり長く書くとおかしな文章になりそうだから、これだけは伝えます。

 僕で良ければ友達になるよ、よろしくね。

 あとで借りた本について語り合おう。

 ではまた。

 大野敏幸より



 返事に時間がかかったのか。

 でも良かった、私、玉砕していなかった。

 安堵感に包まれる。

 自然と嬉し涙が流れる。

 最後には連絡先が書かれてあった。

 私は直ぐに携帯に彼の連絡先を登録して送ってみた。

 数時間後にピヨピヨと音が聞こえてきた。

 見てみると『やっときた。僕から送れば良かったかな?』という文面だった。

 だから私は『うん、ずっと待ってたよ』と送ると『ごめんね』と返ってきた。

 クスッと笑ってしまう。

 何回かやり取りをして。


『よろしくね』

『こちらこそ、ありがとう』


 これから楽しみだなと思ってワクワクした。

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