2話
まだ連絡は来ていない。
もう木曜日だ。
焦る気持ち、不安な気持ちになる。
明日で決まる。
脈はあるのか、ないのかー…。
一睡も出来ずに朝を迎えた。
※
帰りの会が終わって直ぐのことだった。
「
ついに、きたー…。
私は心の中で小躍りする思いになる。
だが、どこか疑っていた。
断られるかもしれない、つまらなかったと言われて本が返ってくるかもしれない。
勝手に不安を募らせる。
「本、ありがとう。面白かったよ」
優しい微笑みで本が返ってきた。
「うん」
情けなくなる。一言しかいえない。
緊張で言葉が出てこない。
「じゃあまた」
「えっ…」
彼は教室を出た。
返ってきたのは本と感想だけ。
手紙には触れることはなかった。
泣きたくなった。でも、まだ教室には人がいる。
グッと涙をこらえて自分も教室を出た。
※
部屋で1人泣いていた。
ダメだった。
頑張りが無駄になる。
初恋なんて、上手くいかないものだ。
告白していないのに、勝手に振られて絶望している。
もう1度、机に置いた本を手に取る。
パラパラ捲ると、ぽとん、と何かが落ちた。
拾うと2つ折の紙だった。
開いてみると、手紙だった。
※
鹿島
はじめまして、なんておかしいね。
でも、まだ出会ってというか、同じ学校、同じクラスになって、まだ1ヶ月しか経っていないから自己紹介するね。
僕は
10月生まれのB型。
本は好きだから、机の中に見知らぬ本があってびっくりしたよ。
読んでいくと手紙が挟まってあって、さらにびっくりしたな(笑)
本を読むのは早かったけど、手紙の返事に時間をかけてしまってごめんね。
あまり長く書くとおかしな文章になりそうだから、これだけは伝えます。
僕で良ければ友達になるよ、よろしくね。
あとで借りた本について語り合おう。
ではまた。
大野敏幸より
※
返事に時間がかかったのか。
でも良かった、私、玉砕していなかった。
安堵感に包まれる。
自然と嬉し涙が流れる。
最後には連絡先が書かれてあった。
私は直ぐに携帯に彼の連絡先を登録して送ってみた。
数時間後にピヨピヨと音が聞こえてきた。
見てみると『やっときた。僕から送れば良かったかな?』という文面だった。
だから私は『うん、ずっと待ってたよ』と送ると『ごめんね』と返ってきた。
クスッと笑ってしまう。
何回かやり取りをして。
『よろしくね』
『こちらこそ、ありがとう』
これから楽しみだなと思ってワクワクした。
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