吾輩はペンギンである。ただ、それだけである。

 吾輩はペンギンである。名前は……あるのかないのか、分からない。まぁそんなことはどうでも良いじゃないか。それとも何か、これを読んでいる君は、ペンギンこそ名前だとでも言うのか? ペンギンとは我々の種類を指す「固有名詞」だ。「人間」と同じ括りなのだ。この翼に誓って、それだけは主張させてもらおうじゃないか。……おっと、話が反れてしまった。まるで、誰も乗る人がいないから、吾輩が反ってしまったみたいになって、滑ったみたいになっているようだが……大丈夫だろうか。
 脱線しすぎたので、いい湯加減に……いや、いい加減に話を戻そうじゃないか。この翼は何も、飾りじゃない。海という、広大な空を自由に飛ぶためには必要不可欠な物なのさ。ボクだって、喧嘩くらいはするさ。でも、手加減(翼加減?)はするし、相手にぶたれたら、「痛い!」と大げさな演技もするさ。
 え? 大根だけにわざとらしいって?(大根役者)
 それでお互いが最小限の傷で済むならそれで良いんじゃないかな。

 吾輩はペンギンである。今のところ、名前は出てきていない。
 この羽根も翼同様に、とても大事な役割を担っているんだ。羽弁なんて、初めて聞いた人もいるんじゃないかな。でも、獲物を捕るにはスピードはとても大事だからね。そのおかげで、いつも鮮度抜群な餌を食べられるんだからほんとこの羽根様様だよ。別にボクだけが特別ってわけじゃない。みんな持ってるんだから平等で対等だよね。

 吾輩はペンギンである。名前は差し置いても少し、気になってきた。これで三つ目。いくら、ちょっと調べれば誰でも分かるからって、あまりにも秘密の暴露が過ぎるんじゃないか。え? 二つ目で最後に言ったことと矛盾してる? はっはっは。まさか、そんな。
 さ、脂肪の解説に参ろうじゃないか。寝具業界もびっくりの五層構造! これは是非とも参考にしてはどうだろうか、なんてことを言おうと思ったけれど、さすがに羽毛の代わりに脂肪を詰めるのは色々な意味で重いね。でも、やっぱり脂肪は必要。(勿論、布団の話ではない)神とか宗教とか、胡散臭いって十把一絡げに払いのけるってわけにもいかないんだろうな、人間って種族は。だけど、それに救われる人も一定数いるわけで。きっと人間って何かに縋りたい生き物なんだな。そりゃ冬には、羽毛布団に縋りたくなるのも頷ける。まさに信仰の対象だよ。人間が神様みたいなものか……まぁ歴史上の人物も神格化されて、信仰されることも少なくないのだから、人間がそんな対象になっても何の不思議もないのか……。実は人間と神様に境界線ってないのかも知れないね。あるいは紙一重か。……紙のような布団なら、風邪を引いてしまいそうだけれど。

 吾輩はペンギンである。おそらく名前は登場しない流れだろうと、そろそろアタリを付けた。
 いや、それよりも何よりも。秘密がどうこう言っているどころか、ついに心臓まで賭けることになったのだけれど。思わず、口から飛び出そうになるくらい驚いたけれども。
 ※ちなみに、先ほどの脂肪の下りで(布団だけに)ベット(ド)と今回の心臓を賭ける(ベット)をかけた寒い笑いを誘っているわけではないことはここで注記しておく。なに、大丈夫。吾輩はペンギンだから。寒さには慣れている。
 懸けようが、賭けようが、「懸けようが」と「賭けようが」を掛けようが、終着点が神様なのはなんかなぁ……。
 つまるところ(詰まるところ)、何が一番重要かって、体の動かし方なんだよね。自分の体は自分が一番良く分かっているとは言えども、その使い方を一歩間違えれば、思うように動かなかったり、パフォーマンスが発揮できないことがあるんだから。
 そう。だから、心臓は掛け値なしに賭け値なしなんだよ。オールインさ。

 吾輩はペンギンである。そろそろ自我を自我を疑い始めてきたぞ。もう秘密の暴露も名前の有無もどうでも良いから、安らかに眠らせほしいと思うのはボクの我がままだろうか。
 知らぬが花 なんて言葉があるけどさ。その花を知ったところで、何色なのか、どんな香りなのか。その物の本質を見極められないなら、知っても花 でも良いよね。いや、意味は分からないけど。
 知りたい なんて、すごく人間の欲求じみているよね。君もそうか。君の勇気には敬意を表するよ。「表彰状」と言って、紙で渡せないのが実に惜しい。
 もう行くのかい。止めはしないけれど、せめて翼は振らせてもらうよ。
 人間が作ったこの世界で確かに人間に作られたって言えるの君だけ
 君にこんなことを言うとどこか皮肉めいているよね。君には皮も肉も無いことも含めて、文字通り。あぁ、どうか誤解しないで。別にディスっているわけじゃないんだ。
 なんか、そんなことを言われる君がどこか人間臭くて良いなって。無神論者であるボクらと違って君は、人間にも神にもなれる存在なんだから。

 吾輩はペンギンである。もう細かいことは言うまい。
 自身の内側をのぞき込み、俯瞰し……あぁ、鳥だけにバードビューイングって言葉がぴったりか。そんなボク。
 最後にこの言葉を残して、ボクは数秒後か、数十秒後にこの下の
 □レビューの内容にネタバレを含む にチェックマークを入れて、その下の
 投稿 のボタンを押してこの世界(ページ)とはおさらばしようと思う。
 吾輩はペンギンである。名前は……言わずとも分かるであろう?