最終話 鈴木夢那
オーディションまた落ちたぁ……。
私、
もうっ! 可愛い夢那をみんなに見てほしくないの!?
すんなり主役やらせてくれればいいじゃない。親子なんだから。
夢那のパパは町長だ。そして鈴木シネマの設立者。この映画の主演はパパの厳正なる審査によって決定される。
娘の夢那だって、ちゃんとオーディションを受けなければならない。
不合格になる理由をパパに聞いたら、映画にするような人生じゃないからだって。
そりゃあ、夢那はパパとママ譲りの頭脳に運動神経、整った顔を与えられて裕福な家庭でぬくぬくと育っている。なんの努力も苦労もしたことのない夢那は映画の主人公みたいな奇跡を起こしたことなんてない。
来月から大学生になる。華のJKのうちに主演俳優やりたかったなぁ。
実は最近、不本意な形で鈴木シネマに出演してしまった。
主演はクラスにいるもう一人の鈴木、
茉希ちゃんは入学してからずっと成績がビリだったのに、学年二位の成績(一位はもちろん夢那)である男子に「俺とは釣り合わない」とフラれてから、そいつを見返すために必死に勉強して夢那と同じ一流大学に合格してしまった(夢那は推薦で受かったけど)。
夢那の記念すべき映画初出演がクラスメイトの引き立て役だなんて。同じ日に観に来ていた茉希ちゃんの勝ち誇ったような顔ときたら! 悔しい!!
夢那だって、鈴木シネマに出るために弱小運動部に入部して大会優勝に導いたり、夢那に無関心な男子を振り向かせて付き合ったりしたのに。
……パパには見破られていた。興味もないこと無理やりするなって。
大学生になったら、夢那にもドラマチックな出来事が起こるかな。観ている人が感動して泣いてしまうような……。
でも、どっちみちパパは娘を
あーあ、親ガチャ失敗だ。
【終】
鈴木シネマ いととふゆ @ito-fuyu
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