宇宙戦争 〜猫派VS犬派〜

雨宮 徹@クロユリの花束を君に💐

宇宙戦争 〜猫派VS犬派〜

 私は重要な使命で惑星537に向かっていた。猫派への交換留学生として。元来、犬派である私は、猫を嫌悪していた。あの自由気ままな生き物を信仰する気にはならなかった。





 私は交換留学生という名目で猫派の惑星に派遣されたが、犬派の最高司令官からは「隙があれば、猫派を殲滅せよ」という命令があり、手元には小さいが破壊力抜群の爆弾を持っている。私は思った。惑星537に着いたら、すぐに爆弾を起動しようと。





「こちら、犬派の交換留学生のタカシ・サカモトです。宇宙船の着陸許可を求めます」





 しばらく沈黙が続く。最悪のシチュエーションが頭をよぎる。もしかして、猫派が宇宙船ごと私を撃ち落とそうとしてきるのではないか、と。





「タカシ・サカモト、着陸を許可します。港の入り口を開けますので、そちらからお入りください」





 これでよし。ひとまず第一関門突破だ。あとは、爆弾を起動するか否かだ。






 私が無事に港に着陸すると、一人の人物が近づいてくる。





「どうも。私は猫派のマオ・ニシカワよ。留学中は私の家で過ごすことになるわ」





 その女性は優しそうに見えた。少なくとも表面上は。





「さて、早いところ家に行きましょうか。犬派のあなたが来たことで、こちらはピリピリとしているから」





 確かにマオの言う通りだ。猫派の連中から殺意を感じる。果たして私は2週間の留学期間を無事に過ごせるだろうか。





 そんなことを考えているうちにマオの家に着く。質素ながらも快適そうだな、と私は思った。





 家に入った瞬間だった。事件が起きたのは。マオの愛猫であるソラが私の愛犬レオに向かって歩み寄るなり、威嚇のポーズをとる。もちろん、レオの方が大きいから、こちらが有利だ。レオも負けじと吠え返す。





「レオ、やめなさい。それでは野蛮な猫と同じになってしまう」





 さすが犬だ。レオはすぐに大人しくなると、お座りをして私の命令を待っている。





「へえ、それが犬の扱い方ね。でも、無理やり手懐けるなんて野蛮だわ」





 私はマオの言葉にカッとなったが、冷静を装う。





「しかし、猫の方が野蛮だろう。飼い主の命令に従わないのは、いただけないな」





 この状況を鑑みるに小型爆弾を使うのは、そう遠い未来ではないな。その時は私も死ぬことになるが、犬派のためだ。仕方あるまい。





 マオの家に住んでから数日。私は猫を徹底的に分析することにした。分かりきっていたことだが、猫は自由気ままで何をするか分からない。そして、帰巣本能というべきものがあり、夕方になると自然と家に戻ってくるのだ。これは新しい発見だった。





「猫には人間を魅了する1つの武器があるわ」とマオ。






武器? まさか猫には爆弾でも仕掛けられているのだろうか。やはり、猫派は野蛮らしい。





「これよ。これが猫の肉球」





「マオ、犬にだって肉球はあるんだが……」





 そう言いつつも、猫の腕を触った時だった。衝撃が走る。なんだ、この感触は。犬の肉球は程よく固く、素晴らしいのだが、猫の肉球は柔らかい。この触り心地、クセになりそうだ。





「どうかしら?」





「マオ、君の言うとおりだ。猫にも猫の良さがあるらしいな」





 2週間の留学期間を経て、私はすっかり猫に夢中なっていた。もちろん、犬に対する信仰を捨てたわけではない。私は思った。猫派と和解する未来も遠くない、と。

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