第17話 親友じゃないか(引きつった笑み)
あれから数日後。
配信アカウントに”筋肉大好きマン”から連絡がきた。
お察しの通りだが、例のデザインの件だ。
早速、連絡に記載されていた場所に赴いた。
渋谷の一角のビルに、鎌倉さんは仕事場があるらしく、そこまで行くと、ビル前で鎌倉さんが待っていた。
「どうもっ、お久しぶりですね!」
「あ、はい……仕立て上げの件は……?」
「ちゃんとできてますよっ!では、早速中へ入ってください!」
招かれるまま、ビルの中へ入っていく。
ビルの中の、狭い階段を昇っていくと、鎌倉さんの仕事場へ着いた。
そこには、様々な布や裁断器具、デザイン用紙が置かれてあり、日常的に彼女が活動を行っている事が分かる。
「……お仕事なんですか?」
「はい、ボクはファッションデザイナーなんですよっ!」
「それは凄いですね……」
「そんな事はどうでもいい事ですので、こちらへ入ってくださいっ」
すると、指し出された先には試着室らしきものがあり、どうやら俺はあそこで着替えるらしい。
中へ入ると、すでにそこにはいくつかの下着が置かれていた。
ん?
下着?
よく見ると、下着は女性用のものと思われ、ペラッペラだった。
……えーっと、うん、嫌な予感がする。
「こ、これは……?」
「ん?下着ですけど?」
「いや、すでに俺は下着を履いてるんですけど、どうして用意してあるのかなーって」
あ、ちなみに今履いているのは男向けのボクサーパンツぞ。
俺の疑問を察したのか、ああ、と彼女は頷くと、ニッコリと笑い説明してきた。
「ええ、勿論これは仕立て上げた服装に合う下着を選んだだけですよ、肉体的なラインが浮かび上がるように工夫してるんです」
ほっ、それなら良かった……
ってなるかー!
これ、明らかに女性向けやろ!
来年には既に30になってそうな俺が、こんなパンツ履けるわけないだろー!
パンツを持つ手がわなわなと震える。
し、しかして、ここで拒めば無礼なのでは?
そもそも、相手は登録者50万人のチャンネルぞ?
ここで気分を損ねるのは……不味い、非常にまずい。
それに、こちもお願いしている立場なのだ、無下にするのは不味い。
今後の関係というのを考えると素直に受け入れるべきだ。
仕方がない……ここは……素直に……
更衣室の中で俺は、ゆっくりと股に手を伸ばした……。
さて、俺の親友である諸君には悪い(?)が、この話はここで終わりだ。
本当に申し訳ないね。
いや、本当に申し訳ないと思っている。
この先が見たいんだろう?
でも、ダメだ。
この先は絶対にダメだ。
これは俺の尊厳にかかわる問題なのだ。
だから、親友である諸君には、この先を覗かないで貰いたい。
ほら、俺と君の仲だろう?
ずっと、ここまで来てくれた君を、俺は信じている。
だから、そんな君に頼みがある。
そっと、この物語と閉じてくれ。
なあに、次の話は明日か明後日には出るだろう。
それまで待てば良いだけの話だ。
賢い君なら、分かるはずだろう?
さあ、このままスワイプせずに閉じてくれ……
ウラギッタナ?
▽
「可愛いですよっ」
ぱちぱちと手を叩きながら、俺の痴態を見てくる鎌倉氏。
鏡の先に居たのは、滑らかな、絹の様な無駄に綺麗な白肌を纏う少女が居た。
薄っぺらいパンツ一枚に、薄っぺらいブラジャー。
俺はあまり胸がない。
だからブラジャーは要らないのでは?と訊いたのだが、「胸を厚くして、服の重厚感を出すため」とやんわり断られてしまった。
相変わらず右手を上げると、あちらも右手を上げる。
まあ、要はこの決して許しがたい姿の少女は俺という事だ。
「うううううううぅゔぅゔぅゔゔゔゔゔゔゔゔ!!!」
人間、怒りがとある点を超えると、呻き声を上げる、とは言った物で、俺もまた怒りの様な何かがキャパシティーを超えて、呻き声が漏れる。
なにに怒っているのかって?
決まっている、自分自身にだ。
少しでも自分を可愛いと思ってしまった自分に、だ。
ぐううううううう!!
この、俺が、この来年には、おっさんになるという男が!!
いや、別におっさんだから何?って話なんだけど、
でも、でも、なにか大切な何かがお亡くなりになられたのは確かなのだ!
「ほらほら、やっぱりこういう可愛い女の子にはこういう下着が合うんですよっ、筋肉もいいですが、こういうのも良いですねっ!」
「うううううううぅゔぅゔぅゔゔゔゔゔゔゔゔ!!!」
嬉しそうに目を細める鎌倉氏とは対照に、俺はただただ呻き声を上げる事しかできなかった。
✛✛✛✛✛✛✛✛✛✛✛✛✛✛✛✛✛✛✛✛✛✛
【作者からのお知らせ】
なんか、ギャグ成分が足りねえ……。
唐突にギャグが書きたくなってきてしまったので、ガチギャグ作品を書くことにしました。
しかして、ええ、残念な事にTS要素はありませぬ……。
本当は、入れたかったのですが、どうしても話の構成的に不可能だったので、泣く泣く男主人公にしました。
ですが、こちらもかなり”癖”に従った作品となっておりますので、是非ぜひ読んでくださると嬉しいです!
いや、マジで読んでくださると嬉しいです!(土下座)
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