確かな生への実感が、人々を救いの灯りへと駆り立てる。
- ★★★ Excellent!!!
『僕はあの日、スカイツリーに登った。』
これは引用させて頂いた冒頭の一文。
これによりぼやけていた視界が鮮明になる感覚が忘れられません。
大雨に見舞われて水没する東京。
水面に顔を出すスカイツリーの様子がありありと頭に浮かびます。
もちろんそんな状況にあったことはありません。
水槽の中のように、水の中を泳ぐ魚たち。
その美しい描写から、一転して食糧難から気力を無くしていく人々の描写。
どこかふわりとした幻想的で綺麗な設定から、ぐわりと現実に引き戻される感じが、
この世界へのチケットになっているようです。
そして、明かされるこの大雨の正体と彼らの結末。
人間の優しさと強欲さ。
危機的状況を目の前にして顕になるのは二つの本質。
634mの高さからいつも人々を見ている彼だからこそ、ここがその場所なのかもしれない。
素晴らしい作品をありがとうございました。