虚、何れかの形を獲り

『怪談』の本質とは一体どの様な
ものなのか。
それは古今東西に於いて能く議論の
的になる。
 本作品は、まさに怪談の名手である
作者からの問いかけでもあるだろう。
とある『忌山』についての様々な噂と
人々へのインタビュー等で構成された
モキュメンタリーの形式(であると
信じたい)で語られる怪異現象。
彼等の証言する怪異の詳細については
バラバラであり、取材すればするほど
曖昧模糊として来る。

 そして、事件は起こる。

これは、怪異によるものなのか。
怪異は人が創るものなのか。それとも
本当に闇の奥から認知されるのを 
待つ 何か が存在するというのか。
 『虚形』という題名が、此処で
まさに存在を誇示する。併せて作者
自身が手掛けたイメージ画像も
それ を助長する。はっきり言って、
とても怖い。本物の怪談であるとも
思う。然しながら

『本物の怪談』とは。ここに来て
その 概念 すら揺らぐ。