心と本心の距離感。心音と本音のせめぎ合い。全てを曝け出す勇気を。

 急にこんな書き出しですみません! もしかしなくても絶対にそうだと言い切れるくらいにここから始まるのは、長い長いレビューです。お時間のある時にゆっくりとお読みくださいませ。と、メタい話は早々に切り上げまして。
 立つ鳥跡を濁さずって言いますけれど、クレイジー小西さん、余韻のように臭いだけ残していかれるなんて、それが意図的だったにせよ、無意識的なものだったにせよその存在感をまざまざと見せつけられたみたいで、僕はめちゃくちゃ感激しています!
 とても近寄り難いイメージのクレイジー小西さん。でも、僕からすればあなたは唯一無二の憧れの存在に他ならないんです。どこまでも果てしない、ともすれば人からバカにされるかもしれないような僕の胸中。すべての人を愛する器なんて、ないのは分かっているけれど、それでもそんな器を作りたい! と切に願う僕の心はとても不安定。焼き入れする前の陶器のようで、ほんの少しの揺らぎでぐにゃりと歪んでしまう……。
 それに対して、あなたの存在感と言ったらもう。威風堂々という言葉を背にして肩で風を切るあなたの姿にどれだけ憧れたことか。王……というか番長! みたいですねって言ったらあなたは怒るでしょうか?
 ひょっとすると、僕はあなたに憧れた分だけ凹んでいたのかもしれません。上を見た分だけ地面にのめりこんでいくような感覚は、果てしなく。地面というよりは沼でしょうか。天と地、どころか天と沼ですね。あなたみたいに何もかも上手くいくわけない自分の人生は踏んだり蹴ったりで、やりどころのない怒りはいつも鉛筆に向いていた。向くべきは自分の心だと理解しつつも、いつも鉛筆を折ってしまう。それはきっと僕の心が折れた音。おまじないと言いつつも、僕はどこか心の片隅では痛めたその心をそっと安置していたのかもしれません。
 それが常態化してきたころ、いつも通り鉛筆を折る僕。でも僕の(両)親から買ってもらった鉛筆を折るのは、どこか良心が痛む。だからそんな後ろめたさ毎、後ろ手に回した鉛筆を持っていくのは、裏手のごみ収集所。誰にも見つからないように、こそこそと動き回る様は自分でも滑稽だと思いますけれど、誰かに見つかったらきっと僕の心は粉々に砕け散ってしまうかもしれません。そうなったら、ほうきと塵取りでその破片まできれいに掃除してごみ収集所にもっていかなければならないことを思えば、それはそれでとても(心ではなく)骨の折れる作業なのです。
 ……と思っていたらまさかの目撃者。なんだ、ネコか。と思ったら違う? とても衰弱していたその生き物。見栄を張ろうが、虚栄心を満たそうが、私は自分の心に嘘をつきたくなかった。「助けたい!」と思う気持ちだけは本物だったのです。時には、自分で自己肯定感を上げていくしかないこともわかっています。そもそも(自己)で(肯定)するのですから当たり前の話ですね。そんなことを思っている間にも時間はどんどんと過ぎていき、「当たり」前の話をしている場合ではなく、助けてくれる人に「アタリ」をつけなければ。
 最初は嫌がっていた美紀ちゃんと、保健室へ。僕はきっと分かっていたんだと思います。保健室にいるのは獣医じゃあない。そんな当たり前のことは。でも藁にもすがる思いで駆け込んだのがこの保健室で、先生で。ただ、いつも痛めた心を安置するその場所に今はただぴーすけの無事を祈ることばかりで埋め尽くしていたのかもしれません。
 濡れたパンが、その後の展開を暗示しているようで、さらに美紀ちゃんの表情からもどこか不穏な空気を感じ取った僕。音楽室に来い。それが何を意味するか分かっていたうえでの担任のシカトには、さすがに(心の中で)一発入れてやりたいと思いながらも、急行すれば。
 裁判所の扉をくぐれば、目の前には裁判長(クレイジー小西さん)の姿が。罪状を読み上げられている間、僕は理性を保てていたでしょうか。もはや死刑が確定したというのに、近藤さんの助けによって、情状酌量の余地が与えられたというのは文字通り首の皮一枚でつながった感覚に等しくて。……少なくとも今は、そんなことを考えている余裕などないわけですが。
 ようやく絞り出した一言は、私の本音であり、心からの心の吐露であり。てっきり小鳥とばかり思っていた生き物の正体は、どうやら小鳥ではなかったようで。事なきを得たといってい良いのかどうか。とにもかくにも、生き延びた。生の実感を今、僕は体全体で味わっています。
 高学年になり、ぴーすけの姿を見た時の僕の気持ちは何物にも代えがたいものでした。そして、その何物にも代えがたいお礼を言いたいのは、まさにあなた。クレイジー小西さんなのです。

 これは厄介な輩に絡まれた。不倫問題に絡まれているだけでも厄介なのに、それに輪をかけて(あるいは人をかけて)巻き込むのはやめてほしい。
 とはいえ、なんだ。この男に絡まれていながら、私は次男を愛で絡んでいることにも気づいてしまった。もういろんな蔦が複雑に絡まってよく分からなくなってきた。いや、一つずつほどいていけば良いだけなので、その実、実にシンプルなのだけど。それだけの冷静さを保てるだけのメンタルでは決してない。
 それでも。妻との関係を白紙に戻すのは、シチューを食べてからでも遅くはないのかもしれない。白だけに。妻が白を切るかもしれないけれど、私はそれでも頭を真っ白にして、フラットな目線で妻と向き合おうと思う。あのペンギンの白いお腹に誓って。