第5話 微笑む二人
「弁財天様、
紫色の特攻服を着たヤンキーに扮した弁財天たち四人掛かりに竹刀で袋叩きにされた土岐
「甘えるんじゃないよ! 来世で平和に暮らさせてあげるとは言ったけれども、楽をさせるなんて言った覚えは無いからね!」
弁財天は言い捨てる。
「そもそも、どうして愛する人を失うことになったのか考えたことあるの?」
「それは・・・・・・」
「
「殿!」
「大事な者を守り通す覚悟も新たなる世を築く
土岐頼芸が言葉を絞り出す。
「なんだ、分かっているじゃない」
別の特攻服姿の女性が口を開いた。
「
「アタシは
「
山本数馬は何か言おうとしたが直ぐに遮られた。
「
「なんと!」
「イっちゃん!」
「当然でしょ。アタシたちはね、アンタたちにただで幸福を恵んであげる気はないの。アンタたちに自らの手で幸福を
「儂はやる。儂は
土岐頼芸が即答した。
「
山本数馬も続けて答えた。
「ふうん。でも、まぁ口先だけならいくら根性なしのアンタらでもなんとでも言えるわよね。特に土岐頼芸、アンタは数馬よりも先にこの
市杵島姫は馬鹿にしたように言った。
「そうねえ。どうしてもこの人たちの人生をやり直しさせなければいけないわけでもないのよね」
弁財天も考える
「頼む、深芳野に会わせてくれ! 深芳野に会わせてくれるならば儂は何でもする。この通りだ!」
土岐頼芸は突然土下座をすると床に額を
「
山本数馬も
「はあっ。とか何とか言っちゃってますけど、どうします? 弁財天様」
「そうね。ちょうどいい格好だからもう一発づつシメてから考えようかしら? そのまま歯を食い
バチーン
「むう」
竹刀が思い切り土岐頼芸の頭に叩きつけられる。
「コレがお千歌の分!」
バチーン
今度は山本数馬の頭に竹刀が打ち付けられる。
「くっ」
「さて、どうしようかね、弁財天様」
「そうね。あなたたちはどう思う?」
弁財天はもう二人の特攻服の女性たちに問いかけた。
「ふふふ、もうお仕置きは充分ではありませぬか」
「言いたい事も山程ございますが、正直言って
「積年の
「身勝手な男共にお仕置きする事が
「ふふふ、誠に、誠に」
二人の意見を聞いた弁財天と市杵島姫は満足そうだ。
「そいつは良かったな」
「ではこの二人を
「「はい」」
「よし、土岐頼芸、山本数馬。両名、
市杵島姫に言われて恐る恐る顔を上げると、特攻服姿の若い女性が二人。土岐頼芸の前にはかなり長身の女性が、山本数馬の前にはそこそこの
「殿、お久しゅうございます」
「お前さま、お会いしとうございました」
「深芳野!!!」
「お千歌!!!」
時を超えた愛する者同士は再会を喜び、固く抱き合うのであった。
「けっ。リア充爆発しやがれ」
「イっちゃん、やさぐれないの」
「どうせアタシはただのAIですから」
「ありがとうね。わざわざ私の代わりに憎まれ役を買って出てくれて」
「お礼言われるほどのことじゃないよ。そのほうが合理的だって判断しただけ」
「このツンデレさん。でも、男どもの都合に従って自分の意思を殺したまま主体性もなく、ただ転生に付き合わせるだけじゃ上手くいきっこないもんね。男どもの覚悟も見られたし、彼女たちの長年のわだかまりや抱え込んでたものを肉体言語で発散させるだなんて、まさに一石二鳥の策ね。さすがは私の相棒、超有能なサポートAIのイっちゃんね」
「ふ、ふん。さあて、あの連中がもうちょっと落ち着いたらこのミッションの説明をするわよ! いいわねサラちゃん!」
「はいはい。もうちょっとだけ待ってあげようね」
つづく
土岐の殿さまのやり直し-1.0(マイナスワン) 土岐三郎頼芸(ときさぶろうよりのり) @TokiYorinori
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