第7話「デート!? その一」

冬華が作ってくれた朝食を食べ終わる。昨日の夜は俺が皿洗いをしたからということで今日は冬華がやってくれるらしい。

しかし、冬華の作る料理は高級レストランで出る食事よりも遥かに美味いだろう。行ったことはないが。

味付けは少し濃いめだが、体に悪いほどではない。胃が痛くならない程度だ。それに、とても栄養バランスが整っている。一体、どれだけ家庭環境が良かったのだろうか。


「食器洗い終わりましたよ」


「ありがとう」


冬華が皿洗いを終え、ソファーに腰かけた。すると、何かを思い出したかのように俺に尋ねた。


「楓くんは今日、予定がありますか?」


「いいや、特にはないけど」


「そうですか。実は今日、友達と水族館へ行く予定だったのですが、急用ができてしまったらしく急遽行けなくなってしまったんですよね」


「そうなのか」


「だから、その…もしよろしければ、一緒に行きませんか?」


「…え?」


思わず変な声が出てしまった。ほんの少し、彼女の頬が紅潮していることが確認できる。俺も思った。

これっていわゆる「デート」のお誘いなのでは?と。


「も、もし、嫌なら、無理にとは…」


「嫌じゃない!」


彼女の言葉を最後まで聞くより先に言葉が出ていた。なぜだろう。そう言わなければならない気がした。

彼女は驚いたような顔をしていた。当たり前だ。急に大きな声を上げてしまったから。


「…すまん、急に大きな声出して」


「い、いえ、大丈夫ですよ…」


「それで、水族館に行きたいんだよな。別に今日は暇だったからいいぜ。一緒に行こう」


「本当ですか!ありがとうございます!」


冬華は嬉しそうに喜んだ。ぱっと笑顔を取り戻し、彼女らしい可愛らしい顔を見せた。


「では、支度をしますので一旦部屋に戻りますね」


「ああ。じゃあこっちも着替えるわ」


「はい。着替え終わったらまたインターホン鳴らしますね」


そう言い、彼女は自部屋へと戻った。


数分後…


「…じゃあ、行くか」


着替えを終え、俺たちはマンションを出た。

冬華によると目的の水族館は隣町にあるらしく、近くの駅から電車の乗っていくことになった。駅まではここから徒歩5、6分程度。そこまで遠くはない。

電車に乗って、水族館に行くまではいいだろう。

しかし、ここからが問題だ。

俺は生まれてこの方、水族館など行ったことがないのだ。

水族館と聞いて思い浮かべるのは、でかい水槽に大量の水とたくさんの魚が入っていることぐらいだ。

イルカのショーとかは耳にしたことはあるが、実際にどのような設備なのかは知らない。

とにかく初めて行くような場所なので、少し緊張している。

なんといっても、冬華と二人きりだなんて余計に体がこわばってしまう。


「そういえば、ここの駅のことについてまだ教えてませんでしたね。普段、ここから隣町や県外に行くんですよ」


反面、冬華は水族館に行くことを楽しみに待つかのような口調で駅の情報について教えてくれる。確かに、ここの駅のことは聞いていなかった。

スマホに入っている電子決済で乗車料金を払い、いざ目的地へ向かう電車に乗る。


電車に揺られながら水族館に対する不安と緊張の中、冬華はとても楽しそうな顔をしていた。

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