第2話 「クラス決め」
桐花さんのおかげで何とか高校にたどり着くことができた。もし一人だったら完全に道に迷っていただろう。
桐花さんからはこの町の情報をたくさん教えて貰った。今住んでいるマンションの近くに小さなスーパーマーケットがあって便利なこと、少し離れているが海があり、夏になればよく賑わうことなど…スーパーマーケットがあるのは大きな利点であり、帰りに寄って夕食の買い出しができる。まあ、海には多分行かないだろう。そもそもインドア派であり年中家でゲームやらアニメやらを観るのが好きだ。
他にも色々な事を聞いたが、話しているうちに学校に着いてしまった。
校門を抜けると、通常の登校時間よりも少し早いのだが人が少なからず多からずという感じで歩いているのが見える。
すると、数人の男女がこちらをチラチラ見てくる視線を感じた。
「あれって噂の女神様じゃねぇか!?まじでかわええなぁ」
「噂では聞いてたけど本当に美人だわ〜。まるで天使みたい〜」
「でも、隣の男子は誰だろ?一緒に歩いてるってことは……彼氏?」
「んなわけないだろ!あの人に彼氏なんかいたら俺泣いちまうぞ…」
視線とともにボソボソ話している声も聞こえてきた。どうやら桐花さんは『女神』だの『天使』だのと呼ばれているらしい。それはそうとして、何故か俺が彼氏と間違えられかけているらしい。一刻も早くここから離れなければ桐花さんが気分を悪くしてしまうかもしれないと思った。
「悪い、桐花さん。ちょっと急用を思い出したから先行くわ。道案内してくれてありがとう。」
「?わかりました。また会いましょう」
「ああ、またな」
急用があると嘘……半分本当のことを言い、視線の雨に打たれまいと生徒玄関前まで走っていった。あのままだったら桐花さんが俺と付き合っているという誤解が生まれてしまいそうだったので桐花さんの為にもあの状況を抜け出したのは正解であった。
生徒玄関には各クラスごとに名前が書いてある紙が貼り出されていた先程より賑わっているだろうか、続々と玄関に人が集まってきた。
そそくさと自分の名前を確認する。
(…C組か……ん?)
自分の名前がC組の紙に書かれていたのを発見した。しかし、何故か見覚えのある名前が2つほどあった。
1つは中学の友達…というか悪友である日比谷 (ひびや)暁斗(あきと)だった。
そうだ思い出した。暁斗は俺と一緒の高校に受かったとスマホのトークアプリで会話していたことをすっかり忘れていた。
もう1つは先程まで一緒に登校していた桐花冬華さんだった。驚いた。まさか一緒のクラスになるとは思っていなかった。
とにかく、唯一軽く話のできる暁斗と同じクラスで良かったと思うのであった。
玄関で靴を履き替え一年教室へと向かう。
教室は玄関からそう遠くない位置にあり、すぐクラスに到着することができた。
するとどうだろう。クラスに入るとひとつの席を多数の女子が囲んでいる。
まさに、その席に座っているのが暁斗だった。暁斗は茶髪で、テレビで見そうな男性アイドルみたいな爽やかイケメンである。無論、中学3年間は学校一のイケメンというあだ名が付いており女子からの人気は絶えなかった。きっと高校生になってもこの調子でモテまくるのだろう。ちょっと羨ましい。
すると、暁斗が俺の存在に気づき女子との隙間から手を振って合図を送ってきた。
「おーい、楓〜〜今年も同じだな。よろしく〜」
「ああ、よろしくな」
暁斗の席まで近づき挨拶を交わす。その間女子達は暁斗に質問攻めをしていた。ある女子は、
「この人は暁斗様のご友人で?」
「そうだぜ、中学からずっとだ」
またある女子は、
「そうなのですね!暁斗様のお友達であるなら安心できますね!」
つまり暁斗がいなければ俺は危険人物だったのか?と、ツッコミたくなったが、心の中だけで言うことにした。ていうか、同級生なのに敬語使って話すとか…初対面であるはずの暁斗にどれだけ一目惚れしたのだろうか。
数分後、少し遅れて桐花さんが教室に入ってきた。
「あ!桐花様よ!桐花様〜!」
「きゃ〜〜!素敵!天使だわ〜!」
暁斗に釘付けだったはずの女子達は一気に桐花さんの方に引き寄せられた。なお、男子も桐花さんに目を注いでいた。
「あ〜あ、行っちまった。やっぱ桐花様には適わないか…」
「お前、桐花さんのこと知ってるのか?」
「そりゃ、この町に来てから情報捜索とか沢山したからな。彼女はこの町一の美少女と言われているらしいぞ。」
「呼ばれ方が沢山あるんだな…てか、お前だってここらに来て1週間とかそこらだろ?情報捜索する時間があったのか?」
「まあ、引越しの荷物とかは全部業者に運ぶの任せたしな。」
「あーそうですか。やっぱ金持ちは違いますね。」
「楓だって金持ちだろ?」
「バカ言うな。確かにいいマンションには住んでるが、親だって奮発してここに住ませてくれてるんだ」
「結構大変なんだな」
暁斗の金持ち自慢を避けるため、俺は桐花さんの方に目を向けた。
すると彼女と目が合い何かを思い出したかのようにこちらにてくてくと向かってきた。
「同じクラスになりましたね。これからよろしくお願いしますね、有明くん」
「お、おう。よろしく……」
急に話しかけてきて一瞬戸惑ったが、普通に返事を返すことに成功した。ニコッとした可愛らしい顔にまたドキッとしてしまった。
同時に、周囲のクラスメイトが一斉にヒソヒソと話す声が聞こえ始めた。
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