第6話「朝の訪問者」

冬華の気が済み、彼女が部屋に帰ってから俺は頭を抱え。

数年の時を経て今日久しぶりに会った彼女に2度も抱きしめられる。勿論、相手の同意のもと(というか1回目は冬華から急に抱きついてきたんだが…)にしていることなので、後々「セクハラです」などと言われることはないだろう。

ただこう、普通の男子高校生があれほどの美少女に抱きつかれるのも、俺の心が持たなくなってしまう。今も心臓がバクバク鼓動している。

とはいえ、事は過ぎてしまった。

今更何を考えても遅いと思った俺は、早めに床に就いた。



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翌朝。今日は休日であるため学校に行かなくてよかった。時計を見るとAM9:21とデジタルで表示されていた。

休日だが予定もなく特に何もすることがないので再び眠りにつこうとしたその時、玄関のインターホンが室内に響いた。

別に宅配を頼んだ訳では無いし、友達を誘った記憶も無い。では一体、誰だろうか。

しぶしぶベットから立ち上がり、寝室から玄関へと向かった。

ドアスコープを覗くと少量の荷物を持った冬華が待っていた。すかさず玄関を開けた瞬間、冬華はムスッとした表情を浮かべていた。


「おはようございます。何回もインターホン鳴らしたんですよ?」


「おはよう。全然気づかなかった。」


「今ので出なかったら朝ごはん作ってあげなかったんですからね」


「すまんすまん……って、朝飯も作ってくれるのか!?」


思わず声を張った。飯を作ってくれるのは夕食の時だけだと思っていた。


「何を言ってるんですか。朝食と夕食、それに今日は学校が休みなので昼食も作りますよ」


「昼食も!?」


さらに驚いた声を上げた。休みの日は昼食まで作ってくれるという。なんと豪華なんだろうか。一体彼女はどこまで尽くしてくれるのだろう。


「まあ、これも恩返しの一環だと思ってください」


「恩返しにしては内容濃すぎでは…」


「恩返しは濃いほどよいものでしょう」


「そうなのかもしれないけど…」


彼女は恩返しと称しているが、ただの世話焼きなのでは?

とにかく、毎日カップ麺やジャンクフードを食べる生活よりかは全然マシなので大人しく作ってもらうことにした。冬華の料理の方が美味いしな。


「あと、今日みたいにインターホンを鳴らしても応答しない場合があると困りますので、連絡先を交換しましょう」


彼女はスマホをポチポチいじりながら連絡チャットアプリを開いた画面をこちらに向けてきた。同様に俺も同じアプリを開いて互いの連絡先を交換することに成功した。


「毎朝、電話かインターホンを鳴らして朝食を作りに来ますのでなるべく起きていてください。早起きは体にいい影響を与えますし」


「ああ…なんか、色々とありがとう」


冬華がだんだんと母親のような存在になってきたなと実感してしまった。彼女は俺みたいに自堕落な生活を送っていないだろう。早寝早起き、健康に良い食べ物を食べたりと、ちゃんと考えているのだろうな、と話を聞いていて感じた。


「では今から作り始めますので、楓くんは朝の支度を済ませてくださいね。休日でもちゃんと着替えたりしないといけませんからね」


「なんで俺が休日の間ずっと寝巻きだって知ってるんだ?」


「あら、当たっていましたか?」


「どんだけ俺のことを……」


「実際のことでしょう」


「分かった分かった。もう痛いとこをつくのはやめてくれ」


観念した俺を見てクスッと笑う冬華。

冬華みたいな美少女の笑顔を朝から見れて少し得した気分になった。

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