story3

 彼の家は両親がよく出張でいないため、彼1人でいることが多いようだ。そんなことだから自炊とか得意なのだろうと思っていたけれど、そんなことはなく高校生なのに目玉焼きを作ることも微妙なんだよねと笑顔で話してたことがある。


 また1週間ほど親が出張らしいので、心配ということもあって彼の家に遊びに行った。沢山話したりして喉が渇いたことを伝えると、彼が冷蔵庫の中に飲み物があるから自由に取っていいよと言ってきた。だから私はためらうことなく冷蔵庫を開けた。だけど、冷蔵庫の中にはなぜだか野菜や肉が沢山あったのだ。料理を作ってくれる親がいないのだからこれじゃ全部食材が無駄になってしまう。


 彼にそのことを伝えると、彼はなぜだか笑った。何もおかしくないのに声をあげて一人で笑ったのだ。


「今日君が来てくれるってことだから、君のために頑張って手作り料理を振る舞おうかなって」


 そうか、彼はいつの間にか私のために頑張っていたのだ。成長していたのだ。


 じゃあ、そんな彼に今日はごちそうになろうかな。


 どんな心を込めて作ってくれるのか、今から楽しみだ。

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1分で恋の回収 友川創希 @20060629

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