本編あらすじ

 新時代の幕開け。開国による変化、文明開化の流れによって急速に帝都は発展していた。

 上流階級の帝都の人々がいる一方、新しい文化を受け入れることができず、古くから受け継がれる根強い生活様式を変えられずにいる者達もたくさんいた。

 その結果、人々の心に歪みが生じ、調和を保つことができずに闇が広がり続けている。

 そして突如出現するようになった地獄ノ門からは、人間を支配しようとする存在『異貌鬼』が放たれた。異貌鬼は幽霊や妖怪とは違い、人間の闇を喰らう目的の為だけに出現した特殊な異形と言われている。

 そんな異貌鬼を一掃する役目を担ったのが、異貌鬼の殲滅を目的として政府が極秘裏に組織した特殊式神部隊『式勠巫覡』だった。

 主人公の鈴鳴朱音は部隊の中でも最強と謳われている式神使いだった。

 しかし一年前の戦闘で相棒である十二天将の式神『騰蛇』を消滅させてしまい、心に深い傷を負っていた。

 朱音は失った式神の存在が忘れられず、新たな式神との契約を拒んで、薙刀一本で異貌鬼と戦う日々だった。

 朱音の実家は神社を経営しており、式神使いの家系だ。世の中は政府の宗教政策による神社合祀の真っ只中で、取り壊される神社も少なくない。

 朱音が『式勠巫覡』に属することで、それを条件に宗教政策から逃れることができ、実家である鈴鳴神社の経営が続いている。

 現在、式神のいない朱音は、いつ解雇されるか分からない厳しい状況だった。

 そんな折り、新たに部隊に入隊したのが黒衣に身を包む怪しげな男『紅冥』だった。

 上官の命令により、朱音と紅冥はバディを組まされることになった。

 幼い頃に朱音は妖怪に襲われて、左目を奪われた過去がある。今は義眼を入れているが、紅冥の顔を見ると左目の奥が疼いて異様な感覚に襲われた。

 その違和感に朱音は、紅冥とバディを組むのを拒んだ。

 紅冥は朱音に憧れて式勠巫覡に入隊したと発言するも、式神を使うことができなかった。

 どういった経緯で式勠巫覡に入隊する事ができたのか不明で、より不信感が募る。

 困惑する朱音は同じ組織の式神使い、幼馴染みの『昇威』に助けを求めるものの、紅冥と昇威はすぐ打ち解けて仲良くなってしまう。

 昇威はいつまでも騰蛇のことが忘れられずにいる朱音のことを心配して、紅冥とバディを組むようにけしかけた。

 頑なに拒絶していた朱音だったが、ある事件を切っ掛けに危機的状況を乗り越えて、紅冥との距離が縮まる。

 そして紅冥は自分の正体を明かした。

 自分は妖怪と人間の狭間に生まれた異端の存在だと。

 朱音は紅冥と信頼関係を結び、式神契約をして紅冥を新たな『式神』として迎え入れた。

 だが紅冥にはまだ秘密があった。実は紅冥は朱音に近づくために、特殊な術を使って上官を操って式勠巫覡に入隊していた。

 目的は朱音に対する罪滅ぼしだ。

 紅冥の本当の正体は、元神様で落ちぶれて妖怪になった成れの果てだった。正体を知られたら朱音に拒絶されると思い、同情を引くように異端の存在だと嘘をついていた。

 紅冥は神様だった頃に幼少期の朱音と出会い、心を救われた過去がある。そこで朱音に対して深い感情を抱いてしまった。

 妖怪になってしまった紅冥だが、その後も朱音への気持ちをずっと胸に秘めていた。

 しかし色々と誤解が生じて、当時、紅冥の妖怪仲間だった鴉天狗の『烏丸』が、何気ない紅冥の発言によって朱音の左目を奪ってしまった。

 妖怪になって色褪せた視界で過ごしていた紅冥。

 友人に鮮やかな世界を見せてやりたいという思いで、烏丸は朱音の左目を奪い、紅冥にプレゼントした。

 紅冥はその真実を知らずに、自分の右目を外して、朱音の左目を入れた。

 鮮やかに見える景色に感動した紅冥だったが、その後、真実を知り、激怒して烏丸を殺してしまう。

 その後、罪滅ぼしのため、そして朱音の手助けをするために式勠巫覡に入隊した紅冥。

 その全てを知っていたのが、当時の朱音の式神『騰蛇』だった。朱音に惹かれていた騰蛇は、式神の掟を破ったことが原因で地獄に落ちて異貌鬼と一体化してしまった。

 朱音と紅冥が式神契約を果たした後、突然、幼馴染みの昇威の身体に憑依した騰蛇が朱音の前に姿を現す。

 騰蛇は嫉妬から、紅冥の正体が朱音の左目を奪った妖怪だと明かした。

 騰蛇の発言に衝撃を受けるも、朱音は紅冥が自分の瞳を奪った妖怪だとは信じられず、その真実を確かめようと、紅冥を直接呼び出して問いただす。

 曖昧な返答する紅冥だが、突然、騰蛇が豹変して暴走してしまう。

 暴走する騰蛇に立ち向かう為に、朱音と紅冥は『式勠』という一体化する術を使い、光の巫女となって戦闘を繰り広げ、そして勝利する。

 その際に、紅冥と騰蛇の悲しくも壮絶な過去の記憶が朱音に流れ込み、すべての真実を知ることになる。

 真実を知った朱音は闇を打ち破り、紅冥と騰蛇を許し、温かい光で包み込む。

 そして朱音の実家である鈴鳴神社の継続のために、巫女舞を披露して、新しい時代へと紡いでいく――。


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式神は主様のことが好きすぎる! 黒猫鈴音 @kurosi_

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