第33話 エピローグ

あれから、およそ二ヶ月の月日が経過していた。シチローのモールス信号による告発をきっかけに、ブタフィの謀略結婚の企ては様々なマスコミによって取り上げられるようになり、ブタフィに関してはそれ以前の様々な悪事……収賄や人権蹂躙などまでが取りざたされ、しばらくの間悪い意味での世界の注目を浴びていた。


そのブタフィも軍の将軍を解任された後はブタリア王国から突然消息を断ち、現在の居場所は不明である。


『某国のスパイに暗殺された』とか『テロリストに身を堕とした』とか、『ファミリーマートでバイトしていた』とか『よしもと新喜劇に入った』とか……様々な噂が流れたが本当の事は誰も知らない。


そして、新宿の森永探偵事務所では……この日、チャリパイの四人とこの事務所に訪れていたジョンは、全員でテレビの画面に釘付けになっていた。


「ねえ~まだ始まらないの?」


「あれから二ヶ月かぁ……なんだか懐かしいね」


ブタリア王国にとって、今日この日は特別な日であった。この日二十歳の誕生日を迎えたイベリコ姫は、今日正式にブタリア王国の王女を継承したのだった。その模様は世界同時中継のニュース番組で、森永探偵事務所のテレビでも観る事が出来た。


宮殿前の広場には、イベリコ王女の誕生を祝福する大勢のブタリアの民衆が詰めかけていた。そして、民衆の関心はこの新王女誕生儀式よりもむしろ、この後に行われる大きな式典の方に向けられていた。


チャリパイとジョンも、テレビの前でその式典が始まるのを、今か今かと待ち望んでいる。


やがて、宮殿の前の特設会場に立った王室の大臣が、厳かにその式典の開催を宣言した。


「只今より、イベリコ・メンチ王女とロース・トンソーク卿の婚礼の式典を開催致します!」


宮殿前に登場したイベリコ王女とロースの姿に、詰めかけた民衆から歓喜の声が上がった。テレビの前のチャリパイとジョンも、ビールジョッキ片手に声を上げて二人の祝福をする。


「イベリコとロース、結婚おめでとう~~」


最高のモチベーションのまま、チャリパイとジョンは宴会に突入。ブタリアでのそれぞれの活躍話に華が咲く。

「そう言えばジョン、ブタフィ解任の辞令がポーク国王の親書に紛れていたって、あれはちょっと出来すぎじゃないのか?」

「ん…確かにあれはCIA の捏造文書だ。ああいう輩は生理的に好かなかったものでね」

「やっぱり……さすがはCIA 、だな……」

「それよりシチロー!ジョンが助けに来る事、どうして私達に教えてくれなかったのよっ!」

「いやあ~ってね」

「まあ、何にせよ全ては無事に解決したんだ」

「フン、いい所は全部ジョンに持っていかれたけどね!」

「ハハハ、まだそんな事を言ってるのか。シチローは」


ジョンは、シチローのそんな子供じみた言動が面白くて仕方が無いという様子だった。


やがて、イベリコとロースの結婚式中継も佳境へと突入していた。和やかな雰囲気の中、ブタリアTV の人気アナウンサーがイベリコ王女へとインタビューを試みる。


『イベリコ王女、ご結婚おめでとうございます』

『ありがとうございます』

『月並みな質問ですが、今のこの感動を誰に一番伝えたいですか?』


そんなアナウンサーの質問に、イベリコは満面の笑みを浮かべてこう答えるのだった。


『このような幸せな結果に辿り着いたのは、色んな人達に助けて戴いた結果の事です。誰か一人を選ぶ事は、私には出来ませんが……感謝したい人達は沢山居ます!


天国にいる父と母。二人の結婚を祝福してくれたブタリア国民の皆さん。

そして……』


テレビのカメラが、イベリコの爽やかな笑顔をアップで映し出した。


『そして……このブタリア王国の窮地を、命を懸けて救ってくれたに、この場を借りて感謝の言葉を捧げたいと思います!』


「キャア~~~今の私達の事じゃないの~~」

「テレビであたし達の事が流れた~~」

「イベリコ最高~~‼」


サプライズ的なイベリコの発言に、踊り上がって喜びを表すチャリパイの四人。

その横で一人、煙草に火を点けながら苦笑いで呟くジョンの姿があった。


「やれやれ……なんだか……」



FIN







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チャリパイFinal~最後のサムライ~ 夏目 漱一郎 @minoru_3930

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