零細工務店が作ったダンジョンの裏側、お見せします

ダンジョンとは何か? 数々の冒険者が一獲千金の夢を求めて彷徨う迷宮。

では何故ダンジョンの床や壁が綺麗に揃えられ、宝箱が配置され、ボスが待ち受けているのか? それはもちろん腕の良い魔族の大工さんが施工して、お客さんが来てくれるように賞品を入れ、ボス役を演じる戦闘員を雇っているからです。

舞台となる骸田ダンジョン工務店は底辺も底辺、明日をも知れぬ零細企業。夢と希望を胸に入社した設計士アンちゃんも、会社が抱える巨額の借金を知って頭が真っ白です。そこに現れたのはドSで鬼畜でパワハラ満載の敏腕ダンジョンコンサルタント、魔上アスタロト――――

このお話、基本的にはお仕事コメディです。零細工務店がドタバタしつつダンジョンを作り上げて冒険者どもを迎え撃ち、そこで得た資金を基にまたダンジョンを作り上げる。
でもそれだけのお話ではありません。個性豊かな所員達はそれぞれの思いや事情を抱えてこの工務店で働いており、それらが絡み合う人間ドラマがまず面白い。
さらにはこの工務店と所員が抱える謎が世界の存亡をも左右するという、緻密に張り巡らされた伏線がコメディ風味の外見に油断した読者を唸らせてくれます。

それにしても愛すべきは多彩なキャラクター。私のお気に入りは真性のゲスであり筋金入りのチンピラ、ゲスーダ・ロクデナン。どうしてこんなにゲスでクズで救いようのない奴まで魅力的なのか、理解に苦しみます。

単純に面白いお話で笑いたいという方も、多彩なキャラが織り成す人間模様を楽しみたい方も、緻密に張り巡らされた伏線に唸りたい方も、ぜひお手に取ってご覧ください。ダンジョンの裏側、面白いですよ?

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