第45話 新たな道連れ


 乳白色の柔らかな世界が広がっていた。

 

 懐かしい。

 

 これは……

 

 そう。これは……


 現世で死んだ後の記憶。

 

 

 俺は……

 

 また死んだのか……?

 

 

 はは……

 

 正義を掲げたらろくなことになんねえな……

 

 

 まあ……

 

 いいか……!

 

 

 満足。

 

 そう!

 

 満足してる!

 

 

 自分の選択にも、信じた事にも悔いはない……!!

 

 

 本当に……?


 

 ああ!

 

 本当だ!

 


 まだ、何も成し遂げていないのに……?

 


 え?

 

 

 だってそうでしょ?


 悪い奴はそのままで、世界は悪と悲しみに満ちているわ……?

 

 

 それは……

 


 あなたの正義は、満足は、自分の為のものなの?

 


 違う……!!

 

 俺は、少しでも世界が正義を選んで欲しくて……!

 

 

 自己満足で死んでいくの……?

 

 

 それは……

 


 満足してはダメ。

 

 満足するには足りなすぎる……

 

 

 でも、俺はもう死んだんじゃ?

 

 生きて。

 

 生きて。

 


 生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて

 

 

 

 

 

「かはぁああああ……!?」

 

 タタラはガバリと上体を起き上がらせた。

 

 そこには、肩で息をしながら涙を流すエルと、疲弊しきったジル、そして村人たちが集まっていた。

 

 エルは目を覚ましたタタラに抱きついて言った。

 

「良かった……目を覚まして良かった……エルの魔法も効かなくて……エルは……エルは……」

 

 タタラはエルの頭を撫でた。

 

 それからゆっくり口を開く。

 

「心配かけたな……必死で蘇生してくれてたんだろ? ありがとうな……どうやら俺はみたいだ……!!」




 その時、シャーマンの村長が村人に支えられながらやって来た。 

 

「タタラよ……おぬしには大きな借りができた……セデック・バレー一同、心より礼を言う……」


 そう言って村長は深々と頭を下げる。


 ジルも村人に支えられながら、タタラとエルに歩み寄って言った。

 

「おぬしが正しかった。どうやらセントラルドグマは、想像以上に手強く執念深いようだ……辺境だからと言って、もはや気を抜けん……!!」

 

 

「ああ……俺が想像するよりもずっと強かった……それに、一人ではとても退けられなかった」

 

 タタラは静かに目を閉じ、その目を開き力強く言った。

 

「改めて頼む。俺と一緒にセントラルドグマと戦ってくれないか? セントラルドグマに勝つためには、セデック・バレーの皆が必要だ……!!」

 

 村長は大きく頷いて言った。

 

「恩人の頼みなら、聞かぬわけにはいくまい……これよりセデック・バレーはタタラと共に戦う……!! そして新たな掟を設ける……!!」

 

「新たな掟?」

 

 タタラが尋ねると村長はフッっと笑って答えた。

 

「おぬしは正義を広めたいのであろう? ならばこの村の正義はこうだ!! セデック・バレーは必ずや恩に報いる……!! 受けた恩を蔑ろにする者は、虎の穴に投げ込まれるであろう……!! これが新たな掟だ……!!」


 村人たちは大声でそれに応えた。



「我はタタラに同行しよう。次の町にも親衛隊長がいれば、一人では危険だ」


「ああ。助かる……!!」

 

 がっしりと手を組む二人を、エルはウズウズ眺めていた。

 

 男の友情フゴフゴ……///////

 

 眼福ですぜ……ぐふふ……

 

 

 こうしてタタラは新たな旅の道連れと共に、次なる町へと歩き始める。

 

 小さな正義の灯火を広げるために。

 

 闇の中に、一つでも多くの、優しさを灯すために。




 三章へ続く。

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正義に憧れ命を賭けた俺が、転生したら盗賊団の頭領ってマジか!? 深川我無 @mumusha

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