おまけ(後日談)
部室のドアを開けると、カミオもワタルも既にそこにいた。
「2人とも早いねえ」
これでも帰りの会が終わってから、余計な寄り道はせずに来たというのに。
壁に寄りかかっていたワタルが顔を上げた。
「今真剣に考えていたところなんだよ、僕たちは人助けの前に、1回部室を片付けるべきなんじゃないだろうか」
「それは確かに」
ぼろぼろのビニール傘が出てきたのは強烈だった。それを軽々ひょいと取り上げて使えと言ったカミオの姿もまた、なかなか印象に残っている。
「あと、顧問に交渉して、制服だけじゃなくてジャージ着用での活動も許可してもらうべきなんじゃないか」
「それも確かにねー」
この間泥まみれになった制服は、1度クリーニングに出さない限りどうしようもなかった。夏服から冬服への変わり目だったから不幸中の幸いだったとはいえ、ネコネもワタルもこっぴどく親に叱られたのだった。
ちなみにブレザーまでしっかり着ていたカミオはというと、なぜか少し濡れたのと、払えば落ちるほどの砂がついた程度だったそうだ。相変わらず、完璧すぎる爽やかさがもはや謎だ。「あいつの制服、なんか特殊加工かかってるんじゃないの?」というのがワタルの見解だ。
「っていうかそもそも、ああいう山登りとか木材の片付けとかするのがするのがおかしいんだよ。事件解決部なのに」
「まあねえ」
それまで黙って笑いながら話を聞いていたカミオが不意に「まあまあ」と口を挟んだ。
「別にいいんじゃない? このままで。確かに事件解決部っていう名前にはしたけど、もともとのこの部の理念は人助けだから」
うん、とネコネも頷いた。
「いろんな依頼受けて、楽しいもん。これからももっと色んな人と会って色んなことしたいなあ」
「よし、綺麗にまとまったところで話し合い終了」
カミオがパチパチと叩いた。ネコネもそれに倣って拍手をした。
ちょっと待てよ、とワタルが言う。
「部室の掃除については?」
「それは面倒だからな」「だよねえ」
──fin.
ヒーローとルバ人 蘇芳ぽかり @magatsume
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