初心者へ向けたお話

主題の重要性

みなさまの応援コメント、いいね、PV数が如実に表れ、私のやっていることが無駄でないということが数値として反映されて非常に喜ばしく存じ上げます。コメントにものちほど返信しますね、色々とありがとうございます。


さて、今回は第二回と云うこともあり、前回の最後で予告した通り。


物語に携わったひとなら誰しも経験のある「発想は面白いんだけれど、書いてみれば面白くなかった」という現象についての解説と、私なりの対策についてお話しようと思います。


まず結論からお話をすると、この現象の正体は「情報の取捨選択の甘さ」が原因の大きなものになります。編集者時代、数多の新人作家の担当になった私ですが、口を酸っぱくして云っていたことが、取捨選択の必要性についてです。


小説には最優先事項に「主題」があります。


これは作者によって「ひと目みて理解できるよう全面的に押し出す主題」もあれば、「疑似餌のように本命と思わせ、裏にあるものが主題」とする作者がいます。前者の場合は言わずもがな皆様が今まで行ってきたであろう手法の作風であり、WEB小説の体感九割がこの手法を用いています。というのも昨今のWEB小説並びに書籍化の決まったライト作品に多いものが、「タイトルを読んでしまっただけで内容が理解できる」といった圧倒的タイパの良い環境であることが要因となっています。逆説的な発想にすると、タイトルで作風を理解できない作品は手に取って読んでもらえないということに他なりません。私はタイトルを長くするのも短くするのも勝手で良いとは思いますが、何分古風な人間なので、長いタイトルで内容がわかってしまうと想像力を掻き立てられないということを考えてしまいます。たとえば熟語、単語をつけただけの作品名であれば好みかと云われると、そうでもないのですけれど。編集者時代には売れなければいけませんでしたから、作者の意向を最大限に尊重しつつ、分かり易いタイトルをつけたこともありました。


主題とはまずなにであるべきか。作者によって、亦は作風によって十人十色のものですが、作者のなかにはジャンルを主題と勘違いされる方も一定数いらっしゃいます。たとえば「異能バトル」や「学園ラブコメ」といったものはジャンルであっても主題にはなり得ません。一部例外は存在しますが。主題とは物語の本質を表すものであり、それは作中の根幹に携わるものです。概念的要因、行動的要因、といった抽象的なものではなく、具体的に分かり易く、ワンセンテンスで表せられるものこそ主題足り得るものです。とはいえ、作品を書籍化までした作者のなかにも、主題がなにか、わらっていらっしゃらないかたもいます。これはたまたまうまくいったという例外的存在なので、普遍的な作者にとっては邪魔なフィルターでしかありません。よって除外、例外とします。


そして主題というものはいくつあっても良いと考える作者もいらっしゃいますが、主題がありすぎると、読者にとって「なにを伝えたいのか」「なにをしているのか」が不鮮明となります。全てを鮮明に主題とすると、本質的に伝えたい言葉がなにであるのか、が見えすぎているからこそ不鮮明になってしまいます。読者は「知りたい」「読みたい」という欲求の許、小説を読んでいる方が大勢いらっしゃいます。云わば結末に向けて一直線状態なわけですね、さて、この状態の読者に向けて、あからさまな答えを提示してしまった場合、亦は答えが複数ある場合、読者は「なあんだ」のひと言で去ってしまうことがあります。主題をひとつに絞る第一の目的は「読者が自分でこの小説の主題、本質を見極める」ことにあります。難解な問題をヒントなしに突破できたすっきり感を、与えてやる側が作者という立ち位置です。決して一緒にハラハラドキドキといった感情を持って共に成長するのが目的ではありません。先生が生徒と一緒になってどうしましょう、先生は先生、生徒は生徒、といった具合に一定の距離、適切な関係性を保持したまま結末まで誘える人物こそ、作者というものです。


あくまで主題は一作品に多くてもひとつ。色々詰め込みたい気持ちも理解できますが、詰め込み過ぎて読まれないということが一番勿体なく、WEB小説では編集もつきませんので、指摘をされることもありません。事実私も指摘しませんし、あえて指摘をすると厄介な人間と認定されてしまうことも屡々。なので友人や依頼をされない限りはしません。

あえて声を大にして云うことではありませんが、物語の主題を解明するという行為は読者として、亦は編集者として非常に厄介なものとなります。物語なのですから、読み手の解釈に任せるというのが個人的な価値観なのですが、作者のなかには「俺の心意を読み取ってほしい」と熱い思いの方も一定数いらっしゃいます。そんな方々にはやはり判然と申し上げますが、「主題をブレさせない覚悟」を持って文筆をしてください。


作者志望の方も、そうでなく趣味として書いている方も経験はあるでしょうが、この一貫性を持つということがなにより難しい。特にプロットを甘くしてしまった方々にとって、執筆中の思い付きからあれもこれもと書き進んでしまう、ということも散見されます。文豪のなかにもプロットをあえて簡単に作るひとも一定数いらっしゃいますが、勘違いしてはいけません。あなたは「まだ」特別な思考を持ってはいないし、「才能」だけで順調にいくとは保証されていません。才能のあるひとにこそ、基本に忠実に動かなければ悪癖となります。私が担当をした作者のなかで、プロットを作ったことがない、というひとは極々少数でした。プロットの良し悪しはないので、プロットについては今度解説をしてみようと思います。「プロット」と「世界観」の構築が小説の第二に必要なものですから、長くなりそうで今から辟易としますね、書くことがあれば頑張りますね。


閑話休題。


主題とはひとつに絞るもの、ですがなかには「いいや私はあれもこれも付け加えて読者に読ませたい」と思う方もいらっしゃいますよね。我慢してください、とは云いません。熱意のある挑戦は須らく尊重されるべきですし、私も尊重します。できることとやらないことは別次元の思考なので、やると決めたらやればいいと思います。そんな方々にとって、ひとつの手法を提示すると、「主題はひとつ、翳題はふたつまで」という方法です。この翳題は私が勝手に今つけたものですが、所謂、主題のなかに沿わせた第二第三の副次的な意味合いを持つテーマのことを指します。主題のサブ的な役割なので副題とつけたいのですが、ややこしくなるので便宜上、翳題としますね。


これは文字通り、主題の傍らにいつも登場人物を悩ませる、物語の根幹である主題とは裏腹に、悩ませはしないが、時折文中に表現されるものであったり、行動原理の末端を担う役割とでも云いましょうか。一例として、私が書いている作品「小説を書く理由」の主題は「夢と本質」であり、翳題は「虚構と現実」です。読んでくれた方はまた別の解釈をしたのかもしれませんが、私はそういった主題を決めてしています。そしてこの主題は読者に知らせるべきでない内容のものとして扱っています。今教えてしまったのでゆくゆくは消してしまう作品かもしれませんが、兎角そういうものとして扱っています。


翳題とは陰と陽の考えで良いのです。奇を衒う必要はなく、もっと云えば物語に於いて不可欠のものではありません。けれども事実として、有名なエンタメ小説や純文学といった小説には、陰と陽が判然と書かれていることが多いです。陽を明るくさせるには、陰を暗くしてしまえば映えますからね。


物語の根幹を今一度考えてください。書きたいと思った構想は、「伝えたい主題はきちんとあります」か? 「誤解されたくない要素は取り除きました」か? 「主人公やヒロインは必ずその人物でなけれいけない」ですか? 主題こそ小説が小説足りうる本質です。書きたいだけで、読んでくれるだけで満足であればそれもまた良し。小さなコミュニティでお山の大将宜しくしておけば良いのです。書きたいだけなのに成果を見てがっかりする必要もありませんし、読まれなくともいいではないですか。書きたいだけなら書けば良い、ですが「楽しいと思われたい」「もっと読みたい」と思われたいのならば、ご自身の構築を見直すこともひとつの方法です。


そして主題には「エンタメ向き」「純文学向き」「ライトノベル向き」「なろう向き」といった各ジャンルにとって嵌り役ともなる主題もあります。今まで読んできた、見てきた作品の共通点を探して、その作品を手書きでも良いので紙に自分なりのあらすじを書き、作者が意図している主題を探すことをおすすめします。周囲で流行っていたから読んだ方や、なんとなくで読了した方も良い機会だと思って挑戦してみてはいかがでしょうか。ちなみに私は主題を見つけるのに同じ作品を十前後読了した記憶があります。作者に提示された主題というものは、嘘というフィルターがかかっている場合もありますので、鵜呑みにできないが故の行動でした。いやはや小説というものは奥が深く、作者の内面を覘けるいい鏡ですよね。


駆け足となってしまいましたが、第二回はこれにて終了となります。


次回の内容は未定となり、私もなにを書けば良いのか手探りです。


こういうことを知りたい、自分の考えは合っているのか、など。なんでも構いません、ご相談くだされば、次回それを書いてみようと思います。


楽しんでいただけた方も、偉そうだと思った方も、好き嫌いと感じた方も、一様に嬉しい反応です。是非是非コメントをお待ちしております。


最後ですが、推敲や物語を読んでほしいという方も、いらっしゃれば読みに行きたいと存じ上げます。感想も必要であれば松竹梅で応えさせていただきます。松は良い処だけの評論、竹は良い処と悪い処の評論、梅は編集者目線の評論(良し悪しの割合は不明)となっております。X(旧Twitter)などで返信をしますので、読者に知られたくないという作者さんも安心してくださいね。


では、次回は第三回。相談がなければ次は「世界観の構築法」か「登場人物の作り方」といったものを紹介しようと思います。たぶん後者になるのかなと。相談は先着順ではなく、面白そうなことであれば題材に、すぐに返せそうであればその場で応えますね。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る