世界とはなにか、世界観とはなにか。

世界観とは。


世界を一つの統一体と見て、その意義や価値に関する考え方。 人生観と関連しあうもの。


このように辞書には明記されています。


今生きている世界も、きっとそのようにできていますし、私の知らない分野の事件や発見、進展などもきっとあるでしょう。エッセイを書いているこのときもそうでしょうし、あなたたちが見ているこのときも同様です。


畢竟、世界とはひとつの線でできている〇に過ぎないのです。そして世界観とは線を丸く覆う作業のことを指します。


嘗て担当をした作者のなかには独特な世界観を持っている方もいらっしゃいましたし、ほとんどなにも考えていないような方もいらっしゃいました。


そして今、このエッセイを見ている作者のなかにも「世界観」というものを大きくは誤解している作者もきっといらっしゃいます。


今回のテーマは「世界観とはなにか」とはなにかについてお届けしようと思います。


例外なく考えては文筆していますが、勢いも多少あり、独り言の延長線上のものなので鵜呑みにはしないでほしいのと、喞言にもしないでほしいです。それだけは約束してくださいね。



さて、さっそく本題ですが。

世界観とWEBで検索すると様々な記事が出てきますね。

そしてだいたいの記事には以下のようなことが書かれているはずです。



「読者を没入するための世界観」

「世界観を作り込む方法論」

「世界観=作者の個性」

「世界観を作るコツ」



端的に申し上げますと、凡そ書かれていることは嘘だと思ってください。

百パーセントでない情報というあまりにも性質の悪い誤情報。世迷言に近い内容ですね。


読者を没入「するため」、世界観を「作り込む」、「作者の個性」、「コツ」


そんなものはそもそも存在しません。


では世に出ている人気作品はいったいなにがすごくて、売れていたり書籍化されているのでしょうか。


例題として、今読んでいらっしゃる「あなた」がパッと思いつく、好きな作品を思い浮かべてみましょう。


それは「海賊王になる少年の物語」ですか? 「無能力者が師匠に出逢い能力を受け継ぐ物語」でしょうか? 「呪物や呪法を用いて最悪を祓う物語」ですかね?


浮かべていただいたものが売れた要因はなんだと思いますか?


キャラクター? 世界観? 用語? 展開? 掛け合い? 描写?


確かに上記のものがなければそもそも売れるはずもありませんが。


編集者として最も評価すべきは、「実在し得る可能性と再現性の高さ」があります。


「腕が伸びる実」、「引き継ぐ能力」、「同居する最悪」、これらは全て物語を構成するパーツであり、部品であるだけで、「物語の根幹を為す」ものではありません。


では何故爆発的な人気になるのでしょうか。

それは「世界観を司る登場人物の背景が、読者にとって共感でき得る可能性」が存在するからです。


熱血漢がひと昔に流行り、現代では冷静な男が好まれます。それは何故か。「読者にとって熱血漢という性格の人間が身近におらず、冷静な男が身近にいやすい」からに他なりません。


小説とは「想像の産物」でしかなく、「世界観は作者が知り得ぬ情報を持たない」という特性があります。これは天才系の登場人物が出た際などによく云われることですが、「天才キャラが実はたいしたことがない」という現象と同一的なものですね。


WEB小説のようにライトノベルのように、「登場人物ありきで物語を作った場合は、世界観が薄くなりがち」です。


理由は明白で、「作者にとって都合の良い世界でしかなく、登場人物にとって都合の良いことばかりが起こる世界」でしかないからです。

さてここで世界観の作り方に入りましょう。

前置きが冗長で申し訳ありません。


「作者」が存在している「世界」は、果たして「都合の良い」ことばかりが起こる世界でしょうか、それとも「都合の悪い」ことばかりが起こる世界でしょうか。


簡単ですよね。

正解は「どちらもあり得る」。


善悪は必ず存在する代わりに、善悪では測れない半端なひともいるし。

万能な法律も、万全な体制も、完全な人間関係もありません。

不運が立て続けに起こる日もあれば、幸運が断続的に観測できる現象もあります。

正しいことを正しいと云えるひともいれば、悪いことを悪いと云えないひともいる。

世界とは混沌によってこそ成り立ちます。そして混沌だけでは成立しません。

完全な人間がいないように、不完全さを持ち得ない完全も亦、存在してはいけないのです。


「世界」を「構築」する「行為」とは、自らが神へと昇華し、「世界を再構築する」ということです。再構築、組んでいたものを分解し、組み直すという意味です。


竜になれる登場人物を発想できたとしましょう。

さて、竜になるだけならまだしも、竜になれる登場人物は亜人でしょうか。人間でしょうか。では亜人とはなんでしょうか、人ならざるものでしょうか、ひとと亜人の差異や定義はなんでしょうか、竜になれるとありますがサイズや運動エネルギーの範疇はどうでしょう、ひと前で竜になってもよいのでしょうか、急激な肉体バランスが崩れたあとのフィードバックはあるのでしょうか、亜人の宗教的背景はあるのでしょうか、他者との関係性はどのようにあるのでしょうか、運的要素は、質量保存の法則は、万有引力定数は、多元宇宙的な解釈は、変貌への本質的な解は、etc.


適当に考えただけでも世界に関連するキーワードがいくつか出てきますよね。


思いついたのは良いことです、豪いです。けれども豪いだけであって、活かせていません。


嬉々として発想を云ってくる作者の方は五萬といらっしゃいました。その全員が上記の問に対して、沈黙や唸り声を上げるばかりでした。物語の主軸は主題ですが、物語の舞台は世界です。世界があやふやで、矛盾があった際は、登場人物の主義主張や背景、人間関係や道徳。これらが一様に無駄だということになります。


主人公は優しくて思いやりのあって好きな子もいて、けれども世界的には殺人OKで世紀末的な暴力が支配している世界なんて、誰が「想像を共有」できますか。

作者が「世界」を再構築する際に最も気をつけなければいけないのは「共有」という言葉です。

共感と云っても差し支えない言葉、他者理解相互理解ですね。


WEBでは世界観を作る際に遣うExcelを出力できたり、YouTubeでは世界観のコツなんてものを教えていらっしゃる方も存在します。


それらに「ない」要素まで作り込んで、初めて世界は完結します。


WEB小説ではありがちな「異世界転生」というジャンル。否定はしませんが私は全く好みません。あれらには先ほどお伝えした「都合の良い」ことばかりしか発生していません。登場人物は全方位から見て幸福になるし、敵を倒してスカッとして終わり。能力はチートを遣って努力をしない。


今住んでいる世界の現実逃避のツールにして、流動食を食べたいのならば勝手にすればいいと思いますし、そんなひとたちには自己成長を私は感じられないので、どうでもよいのですが。


ですが小説や漫画では「売れている作品こそ正義」なので、私が古い人間なのでしょう。


閑話休題。



世界観を作る方法に「伏線を仕込む」といった記事も散見されましたので、云っておきますが。


「伏線」は世界観に必要なパーツではなく「物語」に必要なものなので、信じてはいけませんよ。

WEBの情報に信憑性は皆無なので、本当に鵜呑みにしてはいけません。

当然このエッセイも、私の意見と私の考えなので、鵜呑みは駄目ですよ。


ここまでの話だけでは世界観の再構築方法を明示していませんでした。


続いては再構築とはなにか、線引きとはなにか、を書いていきますね。


「再構築の一例」

世界を零から創造することは、不可能だと思ってください。

何故なら、作者の知能指数ではどう足掻いても全能ではなく、都合の良い世界を作ってしまいがちです。

初めて小説を書こうとするひとに多い思考ですが、思いついたことを連鎖的に繋げていく方法があります。

「Aは竜になれる」→「特別な能力」→「ヒロインを助ける」→「熱いバトルが書きたい」→「敵を作る」→「撃破してハッピーエンド」

上記のような方法ですね。「主人公を基点に世界を構築する」といった方法と云ったほうが分かり易いでしょうか。


特別な人物を書きたいのはわかりました、特異な能力者ということも理解できます。

その後の流れが都合の良い設定過ぎて、私なら一も二もなく却下します。


「やりたいこと」=「読者が面白いもの」という考え方ではなく。


「やりたいこと」=「やりたいことを説明できる世界」を作らなくてはいけません。


作者の皆さんが躓き、辟易とする処がここでしょうか。


「何故?」を追求し、「何故?」に対する「自分なりの答え」がないので薄っぺらくなってしまい、共感も共有もできない駄作が生まれます。


読んでいる読者が「この設定はどういう意味なんだろう」という疑問に対して、作者があろうことか「自分で考えてみて」という投げっぱなしをするひともいます。言語道断、そりゃ詰まらない物語しか書けないわけだわ、と思われるわけです。

事実、私は詰まらないものに対しては一切の興味が湧きません。一読者としての理解が乏しいのならばまだしも、提示されている情報が矛盾していると判明したときのがっかりようったらないです。


作者は常に「何故?」という読者の疑問符に対して、「必ず解かる水準の設定を公開しなければなりません」。

特別な世界にせずとも、「ちょっぴり変わった世界」を想像すればいいのです。

雨が赤色の世界を考えたいのならば、「雨が赤になる理由を提示」し、それが科学的に証明できる水準でなければなりません。


世界観とは適当になんとなくそれっぽくでっち上げるものではなく、疑問に思わせる隙すら与えない再構築できた設定を作らなければなりません。

「今」を書くのが小説ですが。

異世界を考えるにしても現代を舞台にするにしても、「今生きているひとたちもいて、過去に死んだひとたちもいます。もっと云えば未来は不定だけれど、努力ができる可能性がある」状態にしなければなりません。


あやふやなままで、後で設定を盛るなんていう考え方は三流のすることです。

二流にまで昇華すると、「後で設定を盛る」ことを、さも初めから考えていました、とできますが。書き始めたばかりのひとにとっては難しいと思います。


そして世界観を作る方法とはなにか。どのようにして考えれば再構築できるか、ですが。


ここまで読んだひとなら云わずとも理解されているでしょうが。


小説をたくさん読んでください。


WEB小説ではなく、編集者がしっかりとついて、書籍化されている作品を、です。

小説を書くための近道と云っても差し支えのない内容ですが、たくさん読んで、たくさん考えて、たくさん書きましょう。


他人の世界観を箇条書きにして、矛盾が発生しないかを突き止めましょう。だいたいの作品は矛盾しないはずです。

あらゆる角度から注視し、出来損ないの小説だった、と莫迦にするために粗探しをしましょう。けれどもそれを公の場で公表はしないほうがいいですね、ご自身の安全を考えるなら。


ただ読書をするのではなく、物語の核を探し出し、世界観をジャンル分けしてみれば、世界観についてこの記事を読むまでもなく理解できますし、乱暴に書くよりも二倍三倍以上も成長できます。


自分の書いた物語を評価してほしいのなら、まずは評価されても傷つかないメンタルを持つことも大事ですね。



駆け足となりましたが、第三回「世界観とはなにか」でした。


結構書いたつもりですが、改めて読んでみると全貌があやふやですね。

まあ一度二度の記事で全てを書き切れるわけもなし、そこはご愛嬌。


次は「登場人物の作り方」ですかね。今回の記事内で取り上げようとしましたが、文字数が莫迦みたいになるのでやめました。気長に待っていていただけると幸いです。


ちなみにですが。


私のエッセイはあえて「一度見た」だけではわからないように書いています。

抽象的だったり核心を書かないのはそのためです。


小出し小出しに、楽しく楽しく読んでいってください。

何度も読めば、隠しているパーツを見つけることができるようにもしてあります。

わからなくとも大丈夫です、意地悪ではないので、世界観についてもですが、これからのエッセイについても取り上げていきます。


云うなればこれはLesson1の状態です。


私も頑張りますので、皆様もどうか気長に楽しく、一緒に愉楽しましょう。




余談ですが、皆様の温かいコメントや読んでほしいというコメントをいただけで大変喜ばしく感じます。


交流することが好きな人間ですので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。











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