プロット、骨組みに関すること

今回の更新で四回目になります。


タイトル通り、編集者経験の私が、これまで数多の作家さんが困難の壁になってしまっていた障害、「プロット」に関する内容となります。


よく小説を書く際には、「プロットは作っているのか」「構成はプロット通りに進んでいるのか」などの言葉を頂戴することがあると思います。読者の立場になってみると、プロットがあろうがなかろうが、「面白ければ良し」ではありますが、作者としてステップアップをしたいのであれば、作ってみて無駄になることはありません。


けれどもプロット自体、そもそもどういった意味なのか。

こういう考えもいらっしゃいますので、簡単にまとめてみました。


 「プロット」、これは「plot」という英単語で、名詞としては①策略、陰謀 ②(物語・小説・などの)筋、構想 ③小区画の土地 ――という訳になり(出典:英辞郎 on the WEB)、小説執筆の分野ではもっぱら「話の筋」や「物語の構想」との意味で使われる単語となります。


小説だけではなく、漫画や図面を書く設計士といった職業なども使用する単語ですね。所謂「計算をして行為に至る」ことを目的として造られます。

そしてよくある勘違いが、「プロットとストーリーは一緒じゃないの?」という疑問です。


似て非なるものです。


プロットとは「出来事の因果関係」で、ストーリーは「前後関係」です。


もっと噛み砕いて説明すると、「●●●だから●●●」がプロット。

「〇〇〇、それから〇〇〇」こういった考え方がストーリーになると思ってくださって問題ありません。


小説や映画などの多くの作品は「三幕構成」となります。別に決まったルールはありませんが、百年以上前から基本として確立されているこの手法は、書き始めたばかりの方や、ステップアップを目指す方は、基本の形となりますので習得することをおすすめします。

三幕構成とは、「発端」「中盤」「結末」といった具合に、始まりと真ん中、そして終わり、の三部で構成されているもの指します。

 

最初の一幕は基本的に「設定」と呼ばれる部分が必要となります。

物語の主題、世界観、登場人物の背景、どういうキャラクターなのかが必要な情報となります。作者によっては後半の展開から逆算して、伏線を盛り込む、といった芸当も可能でしょう。


二幕では登場人物や登場勢力の「対立構造」が具体化、可視化したり、障害や困難に発展する様を書き込みます。こちらの障害や困難といったものが曲者でして、ひとによっては様々なイメージが湧き起こるものですが、読み手の好みによって障害や困難をわかりやすくするか、読み手を選ぶか、このあたりで作者としての器が計れる面白い処ですね。 

 

三幕では二幕で発生した障害や困難への解決、結末に向かい全ての情報をきっちりと収めることが必要となります。

設定を盛りに盛って結末では回収できずに二巻目、と考える方も多勢におられるでしょうが、小説の基本、特にアマチュアの皆様に置かれましては「小説は一巻完結」で書くようにしてみればいいのではないでしょうか。

読み手からすると、作者の「面白い構成」には特段興味を惹かれにくく、「面白い」か「つまらない」かで決まります。

一巻完結もできない風呂敷の広げ方を見て、大抵の読者は読むことに疲れ、物語の後半になっていくにつれてPV数やいいねが貰えなくなるというデメリットがあります。


イメージですが、設定を大きな風呂敷の上へ奇麗に並べることが一幕。二幕では風呂敷自体を回収できるギリギリの処まで広げることが重要。三幕では広げ切ったギリギリの風呂敷を、奇麗に鮮やかに包み込むようなことですかね。


プロットの段階で三幕の包み込むことができないひとは、特に意識して作りましょう。


作品のクオリティがそれだけで二段三段と上がること間違いなしです。


さて、WEBにはこういった意見もありました。


「プロットを作り込み過ぎると、キャラクターたちが自由に動けない」


これは多くの作者が聴いたことのあるフレーズではないでしょうか。


キャラクター同士があたかも実在するかのように動き出し、タイピングをする指が止まらなくなる現象。


判然申し上げますと、私の経験上勝手に動き出すキャラクターを出す作者は大抵売れません。


言葉が強かったですね。すみません。


「勝手に動き出そうとするキャラクターを自制し、手綱を握って操作する」


これが俗に云う「キャラクターが勝手に動き出す」ということの本質です。


あなたが書いている小説のキャラクターが勝手に動き出しているのは、あなた自身が「書きやすい」亦は「なんとなく」で書いているからに他なりません。


それは「勝手に動かしている」だけであり、キャラクターが動いているように見せかけた「甘え」であり「作品に対する侮蔑」です。私はそんな小説染みたものが大嫌いです。


喋らせたいだけの会話劇、特段意味のない描写、スタンプを押したような登場人物の主義主張、マンネリを通り越して最早芸術と云わしめる展開、キャラクターの造形ばかりに着目し中身がすっからかんのマネキン、etc.


それでは一定数の読者は誤魔化せますが、公募先の編集者には見透かされ、落選してしまうでしょう。私も何度か公募作品を読みましたが、序盤の数頁で辟易とするものが八割以上ありました。残りの二割の裡、一割が「惜しい作品」で、残った一割が「迷った挙句」というものです。全てがこうだったわけではありませんが、今や小説という言葉の媒介は衰退の一途を辿り、将来は書籍化すら危うい業界になりつつあります。よしんば書籍化、アニメ化へと続いたとしても、作品の内容が希薄な以上、アニメ制作のスタッフに人気の運を任せなくてはならなくなりますね。


一応改めて発言しますが、公募をして一次選考すら通らなかった作者の方がもしいらっしゃるとして、「なにがダメだったのか」わからないという方。


要はちぐはぐで曖昧でぼやっとしていてキャラクターの背景が弱くて世界観がありがちで主題がブレてしまっていて、アルバイトの方々に弾かれてしまっているということです。


編集者が読むのは三次選考以上だったので、私の場合はそうでした。


それで一次選考が落ちた、受かった、で囲っているファンの皆さんに声高に報告するのでしょう。いいですか、二次選考まで残ることが作家としてのスタートラインなんです。当たり前です。


一次選考で小説の体を為していて、二次選考で少し深く読まれて弾かれる。


この「少し読まれて」のレベルで落とされてしまうことが原因なんです。


プロットを奇麗に作れば間違いなく二次までは通れるという話ではないですが、けれども勢いや雰囲気で昇っていけるほど甘くはない狭き門ということをお忘れないよう。


無駄な時間を減らし、楽しんで洗練させ、狂気の沙汰で受かりましょう。


私のエッセイを読んでくださっている皆々様には判然と云います。


ちゃんと、物語を、書きましょう。


閑話休題。


プロットの書き方を調べると、大きくふたつのものに分かれると思います。


「自分に落とし込むためのもの」か「他人に情報を共有するもの」のどちらかです。


これから話していく内容は全て前者のものとなりますので、後者についてはご自身でお調べくださいね。


さて、前置きが長くなってしまいましたが、改めて云います。

「プロットには正解ありません」。

よく云えばどういう風に作っても間違いでないし、自分が解かれば合格点となります。

問題はこの合格点のラインとなるでしょう。


曖昧なもののひとつとなってしまいますので、「私の場合なら」という一文を付け加え、ここでは正解とします。他の作者のプロット作成法を公開しようと思いましたが、その方に迷惑をかけてしまう可能性もあり、勝手なことはできないので、この記事では「私の場合」という前提で話をしますね。


プロットを作る=物語を構成する。ということもあり、まずはそこから記事にしてみますね。


物語を思いつくタイミングは様々です。私の場合も例外なくそうです。

頭のなかを空っぽにし、手遊びの一環として現状ある状況を文章に書き起こしていたら閃いたこともありますし、頭のなかにある靄のような曖昧な形のものを友人らに話してみることで具体性が出ることもあります。果てはお風呂や散歩の最中に思いついたりもします。


そして思いついたものを「文字に書き起こし、整理することがプロット作りの第一歩」だと思ってください。


手法はなんでもよいです。箇条書きでも文章でも、思いついた言葉を付箋に書き並べていくことも、なんでもよいです。


そして思いついた言葉を前提に「だから」、亦は「何故」を追求してみましょう。


以下に例としてひとつの作品を思いついたとします。


【例】

廻っている扇風機を見て、「人間関係に苦しむ嘘つきのアイドル」を連想したとしましょう。私の場合はこれらふたつの点を線にします。つまり「扇風機と人間関係」を無理やりでも良いので繋げます。関連することはなんだろう、関連性のある話題はあったりするのだろうか。

ここでどちらを重きに置くのか、ここでは前者としますね。

必要となってくる主要語は「扇風機の原理」になります。

扇風機の風の源になっているファンは、回転方向に対して角度のついた羽根がついています。 ファンの回転によって、この羽根が空気を押し出すことで、空気の動きが生じます。 空気が押される方向は、扇風機の前方であり、ファンの羽根から外側に向かって広がる方向になるので、扇風機の風は外に向かって広がりながら吹くことになります。

これを「人間関係に苦しむ嘘つきのアイドル」に置き換えてみましょう。

奇麗な世界だと認識していた芸能界は見るに堪えない泥沼で、唯一の救いであるファンにすら、辛いときも悲しいときも笑顔で対応しなくてはならない。けれどもファンという存在は圧倒的な力を持ち、ひとりがふたりに、ふたりが四人にと鼠算式に増えていき、主人公は台風の目となって芸能界に君臨する。前進する人気と、取り巻く環境の激化に伴い、大きく外側となる世界へと進出していく。だから人間関係の不和に繋がる。

そして人間性の不和となれば、様々な理由が考えられますよね。

休暇、休日、職場、恋愛、給料、etc.

並べた情報を精査し、主題はいったいなにか、主題に値する深く響く単語はいったいなにか。

私の場合は「虚言癖」を題材にしますね。

主題を決めた場合、私は「虚言癖」に纏わる論文、精神科医の見解、世間的評価、人間観察を一カ月から二ヶ月の時間をかけて情報を収集します。

そして対象年齢を大まかに決め、対象年齢に合った文体を構成するために、現状の癖を上書きします。

出来上がったプロットを二週間置き、再度見直して精査。修正点や二週間前論文などを読む前には考え付かなかった情報を書き加え、二三日置き、再度精査。

始まりから終わりまで、ざっくり四五カ月といったところでしょうか。


こうした流れで作品を見つめ直すと、「途中で書けなくなる」ことや「キャラクターの手綱を握れない」ことが極端に減ります。零ではありませんが。


いかがでしょうか。

まったく同じ考え方の作者さんもいるでしょうし、なるほどといった方もいるでしょう。上記のやり方はあくまで私流の方法ですので、聞き流す程度で大丈夫です。


そしてプロットでお話を進めるにあたり、これは中級者編で解説をしようとしましたが、さわりだけ書いておきましょう。


三幕構成の説明は覚えていらっしゃいますか?


「発端」「中盤」「結末」ですね。


この順番は必ずしも守らなくてはいけないものではありません。


映画で例えて申し訳ないですが、有名な「タイタニック」などは前後が逆転しています。


「結末」「発端」「中盤」の順番で進行されています。


これは形式と呼ばれるみっつの幕の順番を前後させ、個性的な作品に仕上げる手法となります。


始まりに終わりを持って来ることで、この人物の過去を知り、過去を共に過ごしたが故に現在へ向かう最中、感情移入がしやすくなる、といった感情操作が主な目的となります。


ご興味のあるかたは中級編で。




以上が「初心者に向けたプロット論」となりました。


途中思ったことを羅列してしまい誠に申し訳ございません。


そしてもうすぐ1000PVに到達できそうな勢いで嬉しい限りです。


何度も読んでいらっしゃる方も、初めての方も、ステップアップされる方も、皆さんの行動力こそ、私の力の源です。


この場を借りて改めて感謝を。


本当にありがとうございます。



閑話休題






作品の評価、評論をさせていただいておりますが……なにかタダっていう訳にもいかなくなりましたねえ、慾が湧いてきますね。慾は慾です、いいものですねえ。人間的で汚らしくて美しいですねえ。


というわけで、既に依頼されていらっしゃる方も、これから依頼されるかたも、なんとなくでいいですし、しなくともいいですが、このエッセイを近況ノートなどを更新した際に「一度だけ」薦めてください。


そうすればたくさんの作者さんの道標にもなりますし、私はハッピーになれます。


こんなことお願いしてもよいのでしょうか、まあいいでしょう、たぶん。



それでは今日はこのあたりで。


ご拝読、ありがとうございました。










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