春の雨と初恋の切なさが溶け合う、美しい青春の物語

本作品は、幼馴染の男女が恋に落ちる瞬間を鮮やかに切り取った、美しい青春の物語である。



春の冷たい雨の中、ハルと垣田君の繊細な心の機微が丁寧に描写される。

バス停での告白シーンは印象的だ。

濡れたブラウスから透ける肌の色香と少女の羞恥心、そして思いを伝えあう二人の姿は、思春期特有の甘酸っぱさと切なさを見事に表現している。

さらに、幼馴染ならではのお互いへの思いやりと信頼が、ページの端々から感じられるのも魅力的だ。

垣田のあだ名の由来や、名前で呼び合うことへの戸惑いなど、二人の関係性の変化もきめ細やかに描写されている。

特にラストシーンの「手を繋ぐ」くだりは、二人の新しい一歩を象徴していて感動的だった。



全編を通して散りばめられた巧みな伏線と心理描写、言葉選びが美しい、青春の物語である。

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