贈る言葉
もも
贈る言葉
先輩方、本日は御卒業おめでとうございます。在校生を代表して、私から送辞を述べさせて頂きます。
先輩方が入学されたのは今から3年前。明るい高校生活への期待に、胸を膨らませていたに違いありません。淡く色付いた桜が目の前いっぱいに咲き乱れる中、ドキドキしながら正門をくぐったことを覚えていらっしゃるでしょうか?
初めて出会うクラスメイト、新しい机と椅子、慣れない制服に気恥ずかしい思いをされたと思います。今私の目の前にいる先輩方は自信に溢れていて、そんな頃があったとは信じられません。
やがて時は過ぎ、私たち2年生が入学しました。あの日のことは今でも覚えています。入学式の後、先輩方は私に穏やかな学校生活を送る上でのルールを教えてくださいました。殴られても動かず、声を出さないこと、毎月3万円を指導料として渡すこと、先生方への報告を禁じること。先輩方からの温かい御指導のお陰で、私も多少のことでは全く痛みも苦しみも感じないようになりました。この場を借りて、御礼を申し上げます。
これから先輩方は高校を卒業し、大学、そして社会という大海原へと旅立ちます。先輩方には立派な大人になって欲しい、そのために私から恩返しがしたい。そう思い、昨日私は警察署へ足を運び、身体中の傷を撮影した写真と先輩方から頂戴した叱咤激励の言葉を録音した音声データを提出してきました。あぁ先輩方。どうかそのように青い顔をして俯かないでください。せっかくの晴れの門出です。いつものようにへらへらと笑い、胸を張って前を向いてください。
最後になりましたが、先輩方の未来が輝かしいものでありますようにと心から御祈りしております。以上をもちまして送辞とさせて頂きます。御清聴、ありがとうございました。
贈る言葉 もも @momorita1467
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます