最終話 僕の五人の友達

「レイ、遊びに来たよ!」

「ちわーっす、長岡さーん!」


 あれから。

 何とかお医者様が来るまでに身体に戻ることが出来た『レイ』こと『礼夏あやかお嬢様』は、「これなら大丈夫そうですね」と先生からの太鼓判も押されて、この街に残れることになった。


 それで、夏休みが明けたら学校にも通えるように、少しずつ歩く距離を増やしたり、外に出る時間を増やしたりして、身体を慣らすことになった。その役目をなんと僕らが仰せつかったのである。といっても、無理は禁物だけど。


 午前中は僕らはいつものように佐伯先輩のお宝探しをし、レイはその間、ゆっくりと庭を散歩する。誰とだと思う? 幽霊達? ううん、違う。あの時のお社――宿貸しだ。何だかすっかり仲良くなったみたいで、ふかふかの芝生の上をぴょんぴょんと跳ねながら一緒に散歩してる。


 で、お昼になったら持って来たお弁当を広げて皆で食べる。皆で食べるとどんどん食欲が湧いてくるみたいで、レイは僕に負けないくらいたくさん食べられるようになった。それで、心なしかほっぺたがちょっとふっくらして来たんだけど、オバケン君ってば本当にデリカシーがないからさ、それをレイに言っちゃうんだよ。


「なぁ、ちょっと肥えたくね?」


 って。

 あーっ、もう、そういうことは言わない方が良いのに、って思ったんだけど、どっこい、レイは嬉しそうだ。ちょっと丸くなったほっぺたをふにふにと揉んで「本当?」ってニコニコ笑ってる。


 午後からはレイに勉強を教えてもらう時間だ。実はオバケン君も勉強が苦手なんだ。宿題なんかいつも最終日までためてたんだって。僕はさすがにそんなことはしないよ。ただ、解いた問題がほとんど間違ってるってだけ。決してため込んでたりなんかしない。ちゃんとやってるでしょ、って得意気にドリルとノートを広げて見せた時、レイの顔、完全に「あちゃー」ってなってた。何だよぉ。


 宿題が終わったら、次は僕が先生になる番だ。

 店から持って来たおもちゃを出して、一緒に遊ぶ。一応、リリちゃん人形も人数分持って来たりしたんだけど、苦笑いされて終わった。さすがにもうそういう年でもないかな、だってさ。女の子って何歳になってもお人形遊びしてると思ったのに。


 もうすぐ夏休みが終わる。

 そしたら僕は、オバケン君と一緒にレイに学校を案内するんだ。僕は『ぼっち』だけど、もうぼっちじゃない。レイだってもう一人じゃない。


 結局、庭中をくまなく探したけれど、佐伯先輩のお宝は見つからなかった。だけど僕はたぶん、もっと良いものを見つけたと思う。


【終】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『ぼっちのユウ』と『ひとりのレイ』 宇部 松清 @NiKaNa_DaDa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ