眼鏡_5(エピローグ)

 交通事故が起きた歩道の反対側でハットを目深にかぶった男が誰かに電話をしている。

「ええ、今終わりました。無事です」


 ハットの男は近未来的なデザインの腕時計を確認する。


「時間も予定通りです。世界線が切り替わったと考えるべきでしょうね。作戦は成功です」


 通話相手がハットの男に何か質問をする。


「ああ、量子眼鏡クアンタムグラスについては問題ないでしょう。今回の事故で大破したでしょうし、破片を調べられたとしても、この時代の科学力では再現はおろか、解析すらできないはずです」


 通話相手は納得したようだ。


「ええ、それでは私もそろそろ帰還します」


 そう言ってハットの男は電話を切る。

 事故現場には救急車やパトカーが到着して大騒ぎになっていた。


「S………あなたは未来を変えることに貢献しました。歴史書に載ることはないが、あなたは間違いなく英雄だ。ありがとう………」


 ハットの男は最後にそう呟くと、ライターを胸元に掲げる。次の瞬間、ハットの男は消えていた。だがそのことに気づいた人はいないようだ。


 騒然とした事故現場に男児の泣き声が一際大きく響いていた。



 完

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眼鏡 浅川さん @asakawa3

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