第2話
「いや、だから人違いですって……多分それは同姓同名の…」と、その時だった。
家のインターホンがなった。「あ、ちょっと待ってください。」
善瑶は受話器を置き、インターホンで、来た人物を確認した後、玄関の扉を開けた。そこには小型のBOXを持った配達員が立っていた。
「すみません、お届けものです……ここに判子をお願いします……。」
配達員はそう言うと、BOXを善瑶に手渡した。
「ああ……はい……」と、善瑶が判子を押すと配達員は言った。
「では、ありがとうございました……。」
善瑶はBOXを玄関に置くと、再び電話の受話器は浮遊して善瑶の手元に戻った。
「あの……すみません、恐らく同姓同名の人違いだと思います……。」善瑶は申し訳なさそうに言って、電話の受話器を置いた。
「全く……なんなんだ一体……」と、善瑶は呟いた。
善瑶は学校に向かった。
(たく…朝から散々だぞ…。)と、心のなかで毒づきながら通学路を歩いた。
通学路は出勤時間ということだけあってそれなりに多くの人がいた。
人々は皆、善瑶とは肌の色や体型が、異なっていて、善瑶はその人々からできるだけ目が合わないように
下を向いて歩いた。
ふと大きな工事音に善瑶は振り返った。
そこには昔よく初詣の時に利用していた神社が複数の作業員によって解体されている
最中であった。
「ああ……あの神社か……」と、善瑶は呟いた。
善瑶は
物心つく前から、あの神社で遊んでいた。
昔からよく知る神社の変わり果てた姿に少しショックを覚えたが、
(まぁ…この神社も取り壊されて、多分教会にでもなるんだろうな…)と、心の中で呟いた。
「さて……学校に行こう……」善瑶がそう呟いて、再び歩き出した。
そうして学校についた善瑶は、担任に呼び出された。
「リチャードソン先生…ボクに何か?」善瑶は尋ねた。
リチャードソンはその大柄の体を善瑶の前でしゃがませて、青色の瞳を善瑶に近づけた。
「善用くん…実はな…この職員室に君あてに、今朝方奇妙な箱が届けられてな……宛先は君の名前になっているが……」リチャードソンはそういった。
「え!?」善瑶は驚いた。
「その……君は純血日本人だ…近頃は純日本人であることだけで、差別的な言動を行う人間がいると聞く……もしかしたら宛名間違いを意図して行った嫌がらせかもしれないと思ったんだ……」
そういうとリチャードソンは、その箱を善瑶の前に差し出して言葉を続けた。
「充分に…気をつけて、箱の中身を確認して欲しい……。」
「……」善瑶は頷くとその箱を受け取り、目の前にあるテーブルに置いその箱を
ゆっくりと開けた。
すると……中に奇妙なものが、入っていた。
「!?これは……」
善瑶がその箱の中を見たと、同時にそれは急に動き出した。
「!?」善瑶はびっくりしてそれをゆっくりと持ち上げた。
震える善瑶の手からカチャカチャと
金属音を鳴らしながら現れたソレは銀色に鈍く光る、三本の関節を持つ【機械仕掛けの蜘蛛】だった。
「なんだ……これは?」善瑶は首をかしげると、リチャードソンは言った。
「これは……【ジレンマ】じゃないか!?」
「ジレンマ……?」善瑶がそう尋ねると、リチャードソンは答えた。
「ああ、そうだ……。最近開発された機械で、まだ試作品の段階で一般には流通していないハズだ。」
「これは……一体……?」善瑶がそう言うと、リチャードソンは続けて言った。
「ああ、都市伝説クラスの眉唾な情報だが……。かのT.W.H社が秘密裏に開発している物で。なんでもコレは自立して、唯一人の人間を愛し、守る 人型ロボットらしい。だが…真の使い道はまだ不明で……
何故そんなものをジレンマが送ってきたのかはわからない……。」リチャードソンはそう言った。
「この自立して動くロボットを送ってくる理由に検討はつかないんですか?」善瑶が尋ねると、リチャードソンは 首を横に振った。
「いや……全く検討はつかないんだ……。まぁただ一ついえることは学校に持ち込めるものではないから、先生が預かって…」
リチャードソンはそこまで言うと、ジレンマが動き出し善瑶の手にまとわりついた。
「これは……」リチャードソンがそう言っていると、ジレンマは善瑶の腕を伝って、首まで登ってきた。
ジレンマはその位置で止まり、また動かなくなってしまった。
「え?どうした?」リチャードソンはキョトンとした顔でそう言ったが、やがて先程やろうとしたように、ジレンマを持ち上げようとした時だった。
「グギャアアアァァアァァァッ!!」
突然ジレンマは激しく暴れ出し、リチャードソンの親指を噛みちぎった。
「!?イテェエエッ!俺のがァッッ!!」リチャードソンはそう叫ぶと床に崩れ落ちた。
【カイセカイ】 沖ノ島宇天町ファントムフィクサー結成記 倉村 観 @doragonnn
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