【KAC20247】あなた色に

オカン🐷

あなたの色に染まりたい

「うちは女性の方が自己主張激しくて」

「えっ、そうなの」

「うん、ママなんか最たるもので」

「レイさんが、そうは見えないけど」

「ううん、まだまだ認識が甘いなあ」


 オトは椅子代わりの階段に、スカートの裾を伸ばして座り直した。


「ナオさんも大阪弁炸裂だし」

「じゃあ、あきこさんは?」

「あきこさんは何と言ってもまだ新婚だし、一之介さん、あなたの色に染まりたいってな感じ」

「オトちゃんは憧れているんだ」

「うん、いいよね。だからお嫁に行くとき白無垢を着るんでしょ。ご主人様、あなたの色に染めてくださいましって」


 ハハハッ


「オトちゃんって古風なんだ」

「こんなこと言ってて女は子どもが出来ると変わるって。アズくん、じゃない直人さんはどう思う?」

「僕はそんなこと考えたことなかったよ。名前は呼びやすい方で呼んで。幼名をつけるって変な風習だろ。それの方が長生きするなんて地元ではいまだに信じられていて、おかしいだろ」

「どっちがいい?」

「最近は直人に慣れてきたかな」


 家の前に設えてあるコンクリートの階段。

 従姉妹のルナがいた頃はヨッシーと他愛もないおしゃべりを楽しんででいた、おしゃべり広場。

 そこは入っていけないオトの憧れの場所だった。

 それを再現しているオトの心は弾んだ。


「ごめんね。上がってもらったらいいんだけど、ママがはしゃぐから」

「はしゃぐ?」

「うん、お友だち連れて行くと質問攻め」

「おお、それはちょっと、そろそろ行こうか。オープンまであとちょっとだから」


 オトと直人が手を繋いで歩いていると、前から遼平がやって来た。ヨッシーと彼の家族も一緒だ。

 3歳くらいの男の子を肩車し、傍らには大きなお腹をした奥さんが一緒だった。

 ヨッシーが家族を紹介してくれた。

 

 オトはヨッシーに憧れていた時期もあった。


「いいところで会った。そこでヨッシーたちも拾ったんだ。急ぎの用でなければUターンして」


 遼平に背中を押されるように、今来た道を戻って行った。




        了

 

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