【追記】書いたラノベのPR動画を公開してもらうまで

 本エッセイの公開、そして新人賞受賞作の書籍発売から、約二ヶ月になろうとしています。ご無沙汰しております、及川シノンです。


 エッセイ公開時は多くの閲覧や星の評価、コメントやX(旧Twitter)での拡散など、本当にありがとうございました。

 特に「エッセイを読んで、今まで連絡がなかった担当者にメールをしたらすぐ返事が来ました」や「自分が書籍化した時の参考にしたいと思います」といったコメントは、非常に嬉しかったです。

 このエッセイが誰かの参考になったり役立つものになったのであれば、己の反省点も含めて事細かに公開した甲斐があります。


 ただ、エッセイ内で少しだけ触れたものの、詳細には説明しなかった部分もあります。

 その一つが『宣伝動画について』です。

 時系列2024年のページで短く記載しましたが、『書籍発売までの編集者とのやり取り』といった本筋に深く絡む要素ではなかったため、脱線すると思って詳しい説明は省きました。


 しかし自分のXアカウントで需要があるかどうかアンケートを行い、「その話も聞きたい」という意見が上回ったため、追記・補足という形で書いていきます。蛇足とも言う。

 それに動画の公開直前でサイバー攻撃によって宣伝できなくなった、という笑っていいのか悲しんでいいのかよく分からないトラブルも発生したため、多少はドラマ性があるのかなとも思ったからです。


 興味がある方は、是非最後まで読んでみてください。ついでに動画も視聴していただけると、凄く嬉しいです。



***



・2024年3月頃

【数ヶ月単位でメールのやり取りが滞っていた編集者との連絡も復活し、書籍発売に向けて加速し始めた頃】


 自分の中では以前から「内容としては面白いものが書けたけど、普通に販売しても普通に売れず一巻で打ち切りになるだろうな」という想いが常にありました。


 と言うのも、例えば電撃大賞といった注目度の高い新人賞で大賞を獲っただとか、タイトルやあらすじの時点でネット上で話題になったとか、小説家になろうやカクヨムで大人気の作品が満を持して書籍化する、といったタイプの作品ではなかったからです。

 もちろん新人賞を受賞して出版されて、それが発売直後から話題になって大ヒットするのであれば、何も問題はありません。

 しかしそんなことは非常に稀なケースであると当然知っており、何より19歳の時に受賞して一巻打ち切りになっている経験が既にあるため、普通のことをしても普通に売れないだろうなと、昨今の出版不況も鑑みつつ、そう判断していました。


 当然ながら、出版社は一冊でも多く売るために宣伝や広報活動などを日頃から行っています。手抜きをすることはありません。(たぶん)

 とはいえ編集部任せにせず、自分でもできるPR活動をしようと、書籍化作業中からずっと考えていました。



・3月下旬

【そんな想いを編集者に伝え、ひとまずの了承を得ることに成功。ただし編集部内での確認を取ってからとのこと】



・4月下旬

【約一ヶ月後。PR活動を行ったり宣伝の依頼自体は編集部としても問題ないが、もし誰かYouTuberなどが「宣伝動画を作ってやってもいいよ」とOKを出した場合、まず共有してほしいとのメールが編集者から来る】



・5月初旬

【企業案件として依頼を出して良いとの許可が貰えたため、様々なYouTuberや動画投稿者・インフルエンサーに依頼のメールを送りまくる】


 今回出版する受賞作は『異世界もの×ホラーもの』という作品だったため、異世界好きやラノベ好きだけに向けて宣伝しても、あまり効果はないと思っていました。

 そもそも「主人公を追放した連中が落ちぶれてざまぁあああ」とか、「ハズレスキルに見せかけたチートスキルで無双しまくり成り上がり!」という路線とは、若干異なっている内容だからです。

 なので、異世界ものやラノベは普段読まないけれど、ホラー作品やホラー映画は好きだ、という層にむしろアピールすべきだと考えました。


 そのため、心霊スポットを探索するYouTuberさんだとか、都市伝説やオカルトをテーマに扱う投稿者さん達に、片っ端からメールを送りました。

 しかし集英社という企業の知名度があるとはいえ、よく分からない無名作家の、新作ラノベの宣伝依頼を受けてくれる人はなかなか出てきませんでした。



・5月上旬

【YouTubeにて歴史上の事件・戦争の解説や、偉人の紹介動画を投稿しているグループ『非株式会社いつかやる』所属の『いつかやる社長』様から、「動画を作ってもいいですよ」との返信が届く】


 このまま誰も案件を受けてくれないだろうか……と、自分の中でやや諦めムードが漂っていた時でした。

 この連絡が来た時は、非常に嬉しかったですね。心霊やオカルトを取り扱っているYouTuberさんではありませんが、ニコニコ動画にて『世界の変人・奇人・偉人紹介』という人気シリーズも投稿している方であり、自分はその動画シリーズを第一回から視聴しているただのファンだったからです。


 普段は歴史ものを取り扱っている方ですが、以前にゲームやラノベの紹介を企業案件として動画化しているのも視聴していたため、メールを送る候補に入れていました。



・5月中旬

【Zoom打ち合わせ】


 そして作者、編集者、投稿者の三名によるリモート会議が行われました。

 動画の制作には約一ヶ月ほど時間がかかると説明されましたが、発売予定日が6月25日であるため、問題はないと判断。

 発売日直前の動画公開を目指すということで、依頼料などの振り込みや以降の細かい相談・連絡は編集者さんにお任せしました。


 Zoomでの打ち合わせは円滑に進み、どういった内容にするのか、依頼料はこれくらいで良いか、いつかやる社長様が出版した本も個人的に持っていますとか、実は担当編集者も前々から『いつかやる』グループのYouTube動画を見ていましたなどなど……非常に和やかなムードで終了しました。


 リモートなので叶いませんでしたが、リアルでの打ち合わせだったら間違いなくサインをねだっていたと思います。

 ファンだった(今でもファンですが)投稿者さんに宣伝動画を作ってもらえるだなんて、最高にラッキーでワクワクしていました。



・6月8日

【KADOKAWAグループへのサイバー攻撃。ニコニコ動画のサーバーがダウンし、復旧まで動画の投稿・視聴ができなくなる】


 ミィー! ミィーッ!!(頭を抱える猫ミーム)


 本当に予想外というか衝撃だったというか……。皆さんもご存じの通り、KADOKAWAグループ全体への大規模なサイバー攻撃が行われ、ニコニコ動画にて投稿するはずだった宣伝動画も公開延期となりました。

 何故、よりによって7月でも8月でもなく発売月の6月だったのか……。いやどの月でもサイバー攻撃はするなって話なんですけどね。


 ともかく不測すぎる事態により、宣伝動画の投稿・公開は復旧後ということになりました。


 受賞から発売まで二年かかっただけでもアレなのに、宣伝動画が公開できなくなるアクシデントまで襲ってくるだなんて……。運が良いのか最悪なのか、本当に分からないです。



・6月25日

【書籍発売】


 宣伝動画の公開は未だできない状態でしたが、しかし書籍自体は無事に発売されました。

 色々と大変だったものの、正常に発売されただけまだマシなのかもしれません。

 KADOKAWA系レーベルで出版する作者さん達は、公式サイトにすら繋がらなかったんですから。自分はまだマシな方なんだなと認識を改めました。



8月5日

【ニコニコ動画の復活】



・8月12日

【動画公開】


 こうして紆余曲折ありつつ、書籍は発売されて案件動画も無事に公開されることになりました。


 この場を借りて改めて、依頼を快く引き受けてくださり、その上トラブルがあっても動画を投稿してくださったいつかやる社長様には、心から感謝を伝えたいです。本当にありがとうございました。



***



 以上が、宣伝のためにPR動画の作成を依頼してから公開されるまでの、大まかな流れです。


 自論になりますが、小説は書いたらそれで終わり、あとは原稿を出版社に送って発売されるまで(もしくは発売された後も)「売れたらいいな~」と思いつつゴロゴロして待っている……という態度では、生き残れないんじゃないかなと思っています。

 もちろんゴロゴロしていようと既に人気があって売れるの確定なら、それが最高ですけど。


 そうでないなら自分にできるベストを尽くし、その上で駄目だった時に初めて諦めようと、今でも思っています。


 別に、コレを読んだ皆さんに対しても「宣伝のために行動しろ、動画を作ってもらえ」とか言うつもりは毛頭ありません。

 ただ宣伝の大事さや必要性、もっと言えば「自分の作品のために、できることをできる限り行う」という部分を、少しでも感じていただければ良いかなと思います。


 まぁ、とはいえ大量に宣伝したって売れない時は売れないですからね。


 しかし折角クオリティは問題ないのに、誰にも面白さや存在すら認知されないまま売れずに消えていくのは、後悔しか残らないでしょう。


 私は宣伝動画の公開後も、自分なりに『できる行動』をまだまだ考えて用意しています。




 ……そんな感じで、かなり長い蛇足となってしまいましたが。ここまでの閲覧、改めてありがとうございました。


 もし少しでも興味を持った方は、ニコニコで現在公開中の宣伝動画や、あるいは出版した作品をチェックしてもらえると嬉しいです。


 それではまた、いつかどこかで!

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新人賞を受賞してから発売まで二年かかったラノベ作家の話 及川シノン@書籍発売中 @oikawachinon

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