まとめ
ここまでエッセイを読んだ方には理解していただけると思いますが、この二年間に起きた出来事は、冒頭でも言った通り『被害者の作家VS加害者の編集者・出版社』という性質のものではありません。
何故なら私にも、大きな問題点や反省点があったからです。
遠慮したり「他にも仕事しているから」と言い訳せず、こまめに電話やメールを送るべきでした。
先輩の作家や友人達に相談し、アドバイスを得るべきでした。
どうしてメールの返信が遅れているのか、編集部内で何が起きているのか、早く返してもらうためには互いにどうするのが良いのか。そこにもっと踏み込んで話し合い、互いが納得するまでコミュニケーションを取るべきだったと思います。
「売れてもいない無名の作家が、編集部や編集者の仕事に口出しすべきではない」と目を背けたり、嫌われるのが怖いからと逃げたりせず、『自分が書いた作品を出版する』ことに関わる部分なのだから、もっと責任感を持って必死になる必要がありました。
そのため、このエッセイを読んで『集英社ダッシュエックス文庫の編集部や編集者が、新人賞を与えた作家を二年も放置した』という誤った風評を広めるのだけは、絶対にやめてください。
そんなことをした時、初めて『加害者』が生まれます。それは貴方になってしまいます。
編集者さんとのメールや電話でのやり取り自体は、間隔が一ヶ月単位で空いたとしても、この二年間すごく和やかで建設的なものでした。
以前に電話でオススメしてもらった『残滓』、面白かったです。
「及川さんのオススメホラー映画は何ですか」という質問に、口下手なせいでキョドって上手くお答えできませんでしたが、個人的には『仄暗い水の底から』が個人的な原点ですかね。あと『シャイニング』は『ドクター・スリープ』込みで好きですし、最近観たのだと『黒い家』が良かったです。
オススメがあれば、また教えてください。
……といった具合に、編集者や出版社との関係が険悪になっている、というわけではありません。
正直に言えばもちろん、二年もかけずに早く出版できていれば、何も言うことはなかったです。
しかし私は、この二年間に対して怒り狂ったり不満を爆発させるのではなく、人生の中で起きた貴重な体験として、今後デビューする若いクリエイター達が悩んだり困ったりしないよう、少しでも活かしていけたらいいなと考えています。
二年という時間は戻ってきませんが、『辛く無駄な時間だった』とするのか、『これからの人達にとって参考になる贈り物』にできるかは、自分自身の行動によって変わってくると思います。
私は、この二年間の停滞も反省も、いつか誰かの背中を支えるものとなり、それを誇れる日が必ず来ると信じています。
……「今ちょっとカッコつけたでしょ」と指摘されたら、その通りとしか言いようがないです。
と、いうわけで。後書きから読んじゃうタイプの人達のために要約するなら
・受賞してから二年間も発売しなかったのは、作家も編集もそれぞれメールのやり取りが遅かったため
・教訓としては遠慮せずガンガン連絡しよう
・一つの作品、一人の編集者、一社の出版レーベルに固執せず、色んなものを作って色んな所に送ってチャレンジし続けるべし
・困った時は抱え込まず周囲に相談しましょう
・過ぎた時間は戻ってこないが、これからの未来はいくらでも輝かせられる
といった感じです。
全ての受賞者、あるいはプロを目指す全てのチャレンジャー達、プロだけど編集者との関係で悩んでいる全ての作家達にとって、何か少しでもプラスになる内容となっていれば幸いです。
皆さん、これからも頑張っていきましょう!
※※※
余談ですが、「お前は出版まで二年かかっただけでニャーニャー言ってるけど、俺なんて三年だぞ」とか「私なんて受賞から四年もかかったのよ!」っていう人がいれば、是非お話を聞きたいのでコメントやメッセージをお送りいただけると嬉しいです。
漫画とかなら『持ち込みから連載まで数年かかった』って話は聞きますけれど、ラノベ界ではあまり聞いたことがないので。
特にいなければ『受賞から出版までの最長期間記録保持者』は僕ってことでいいですかね!?
2022年4月25日受賞発表~2024年6月25日発売なので、僕の記録は2年と2ヶ月です。対戦よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます