第9話 ある日の日常〜お留とお玉とお袖の場合〜

河津桜が満開の河川敷…

その周辺の土手は、菜の花の黄色と大根の花の白色で鮮やかに染められていた。

そんな風景を見下すよう建てられた、とあるごく普通の二階建の一軒家…

そこは今日も朝から慌ただしい悲鳴で一日が始まるのであった。

「キャーー!また決まらないじゃん!もう時間無いのに〜(泣)」

ドレッサーの前でセクシーなスケスケの下着姿でそう叫びながら金髪の髪をイジるこの爆乳ギャル♡

彼女の名は《お留》…

寛永二年産まれのピチピチのギャル(死語)である…

つまり現在三百九十九歳なのだが、本人曰く十八歳(+381)と言い張っていたりする(汗)


そして…

「あら、お留ちゃんどうしたの?今日は逢引なんじゃなかった?」

「そうなん!だからお玉っち〜ヘルプだし〜髪型が超〜決まらないよ〜どうしよう〜」

半泣きの状態で取りあえず服を着始めたお留を、呆れ顔を浮かべながら見つめる黒髪を後ろで束ねたお姉様風のこの美女。

どうやら部屋のドアが開けっ放しだったらしく、丸見えだった事も呆れていた理由の様だ。

そんな洗いざらしのTシャツに青のGパン、ピンクのエプロンをしたこの美女…

彼女の名は《お玉》である。

享保八年産まれでなんとあのお留より歳下だったりする(驚)

あのお留よりもだ!

※大事なとこなので二回言います!


「よし!お着替え完了〜♪ん〜やっぱパーフェクトだし♡」

ドレッサーの鏡に映るその姿にウィンクしながらポーズを決めるお留嬢(笑)

「…え〜と…なんて言うか…相変わらず個性的だわね…全体的に(汗)」

それを見て溜息と冷や汗をかきながら再び呆れ返るお玉さん♪

「ウフ♡かわいっしょ♪今日はピンクと黒をメインにしたゴスロリファッションなの〜♡」

…だそうだ…


すると…

「あのさ…そのでかいの(胸)…もうちょ〜っと隠せないの?何気にムカつくんだけど」

文句と言うかクレームを入れる女性の影が一つ…

こちらは男物のブカブカなYシャツ一枚の姿だった。

彼女は茶髪のショートヘアーをかきながらシナモン・スティックをタバコの様に咥え、そんな事を言っていた。

そんな彼女の名は《お袖》…

この三人の中で一番歳下と言う事になっている。

何故なら彼女自身、二百年より以前の記憶が無いからてある。

黄泉姫曰く…

おそらく三百年は経っていないだろうと、こちらもあやふやな回答しか出なかったからだ。

そんな彼女…

さっき起きたばかりなのか、いまだ寝ぼけ眼のままお留の側に近づくと、彼女のその爆乳を鷲掴みして自分の胸と比べる様に交互に揉みだした(汗)


「え〜!でもでもお袖ちゃんね、コウ君は喜ぶし〜それに挟んであげるとね真っ赤になるの♪それってパネェ〜な位ラヴリィ〜だし〜♡」

そう言うお袖からなすがままに揉まれるのを容認するお留は、今度は二人がカチンとするセリフ(要は惚気話)を嬉しそうに話始めた。

「「何処をさ!!」」

「顔♡」

『挟めるんだ…(汗)』

『挟めるんかい(汗)』

二人共…

解るよ、その怒り混じりの冷や汗…

只、彼女天然だから許してやって欲しい…

「そう言えば〜この間挟んだまんま倒れ込んだから逝っちゃいそうになったっけ…」

「「何処にさ!!」」

「三途の川♡」

おいおい…(怖〜)


ちなみに彼女のボーイフレンドであるコウ君(本名:航平)とは…

要介護度3で現在有料老人ホームに入所している七十八歳のポチャ爺の事だったりする。

しかし彼女にとってはかなり歳下のボーイフレンドだという事である。

そしてなんでも今日は施設から外出許可を貰って二人でお花見デート(ラブボでの別のお花見も含む)するらしいのだ。

まぁ〜

何というか、ラヴラヴらしい…


そんなやり取りの最中…

【ジリリリーーー♪】

突然目覚しのアラームが部屋中に鳴り響いた。

「あーー!もうギリだし!」

突然のアラームに髪型が決まらなかった事を思い出したお留は、真っ青になりながら髪をいじり直そうとすると…

「ほらお留ちゃん、今日はこれで誤魔化したら?」

お玉がクローゼットからピンクの可愛らしい帽子を取り出すと彼女の頭にそっと乗せてやった。

「わ〜お玉ちゃんナイスだし〜♪」

確かにナイスチョイスだ、可愛い♪

「じゃ〜いってきま〜〜す♡」

コーディネート的に凄く気に入ったお留は、お玉の頬にキスをすると上機嫌で部屋を後にするのだった。


「なぁ〜お玉さ…あの娘今日もするのかね…アレ?」

そう…

アレである。

常々【生涯現役!】を謳うお留と航平…

確かに赤ちゃんができる心配はないだろう。

普通に考えたら…


しかし大丈夫だろうか?

アレ無しでアレ出すの…

…まぁ〜色んな意味でだ…


「多分ね…でもコウちゃんて人…そろそろ命日が近いかも…」

『ウンウン(汗)』

そんな彼女を見送りなから無言で頷くお玉とお袖…


ちょぴり羨ましくもあるが《後々面倒な事にならなきゃ良いけど》と心の片隅で祈るばかりなのであった。


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