第8話 黄泉姫の正体

ガーデンアーチの支柱が見えなくなる位、藤のしだれ華が見事に咲き誇り、別の花壇にはちょっと小ぶりな向日葵がお日様に向かって首部を上げていた。

他の花壇も秋桜や菜の花が咲き乱れている。

まぁ〜

要は四季に喧嘩を売る様に色んな花々が勝手に咲き誇っているのだ(汗)

それがジャングルを模した作りをしたこの温室の特徴なのであった。

そしてこの温室…

島のほぼ中心に位置するちょっと大きめな集落に作られていた。

というか、集落と言うよりも村と言って良いかもしれない。

何故なら島の住人の約半分はこの村に住んでいるからである。

ちなみに残り半分の住人は、八尺やミセス・テケテケの様に村の郊外に住んだり、森や海辺、休火山の麓や湖、地下等を住処に暮らしているのであった。


そんな温室の一角…

大きめのパラソルの下、ビーチチェアに寝そべりながら申し訳程度な極小の布面積の白いマイクロビキニを着て日光浴を楽しむ黄泉姫の姿があった♡


八尺に負けず劣らずな二つの山脈にカンナで削り取った様なウエスト、更にその下のモザイク処理が施されたセンシティブな場所に薄っすらと汗をかきながらスパークリングワインに口をつける黄泉姫…

まるで拉致ってくれと言わんばかりの挑発的な色香を漂わせている(笑)


…だが…

「キャハハハハ♫」

「あ〜!待ってよ〜」

「こらアンタ達!泳ぐならちゃんと浮き輪を持っていきなさい!」

「かぁちゃんオシッコに行きたい…」

「ほらみな!だから泳ぐ前に行っときなさいって言ったでしょ!」

「ほら皆走っちゃだめだよ〜」

「月子ちゃん早く早く〜♫」 

「ねぇ〜この水着…似合う?」

「う、うん…凄く似合ってる…よ♡」

「今日こそ負けねぇ〜からな!」

「クロールで犬かきヤローに負けるかよ!」

「やっぱ仕事終わりの温泉は格別だのう♫」

「うだなぁ(そうだなぁ)〜後ちく〜と麦酒を持ち込めれば最高なんじゃがなぁ〜」

なんだろう、このカオス的な光景は…

ハイ、まぁ〜なんというか…

その…

賑やかである(汗)


それもそのはず…

今黄泉姫の目の前に広がる光景は、さながら市民プールのそれであった(笑)

しかもその奥にある建物は、どう見ても銭湯にしか見えない。

つまり今彼女がいる場所は確かに温室なのだが、中身は室内プール場兼ジャングル温泉浴場兼季節を無視した花々が咲き乱れる、そんな温室なのであった。


…そして言っちゃ〜何だが…

浮きまくってるよ…

黄泉姫…(汗)

「だから姫様言ったじゃない、この時間家族連れが多いからその格好じゃ〜浮くって(呆)」

「だって里見ちゃん!たまには息抜きしたかったんだもん、いいじゃない(泣)」

「見せる相手もいないのに?」

「う!(泣)」

「エスコートしてくれる殿方もいないんですよね?」

「ギク(泣)✕2」

「ましてや立場的にナンパすらされない…」

「…里見ちゃんの意地悪〜(泣)✕3」

何も泣きながら抗議しなくてもよいと思うのだが…

いつの間にか彼女の背後に立つホットパンツに夏物のパーカーを羽織ったあの結界師の里見…

彼女のその言葉に傷ついた黄泉姫は、つい地が出てしまい、人目をはばからずそんな口調になってしまった。

要は普段の黄泉姫は、こんな感じで何処か残念な女性なのであった。

「姫様姫様、言葉遣い」

その辺を正す里見。

ここには営業スマイルで威厳ある態度で接する彼女しか知らない島民も大勢いる。

「あ!よ、良いではないですか、たまには心穏やかに過ごすのも」

「穏やかに…ですか?まぁ〜確かにそうですけどね、でも市民プールでその水着は痴女にしか見えないてすからどうかと思いますよ」

奥歯に物が挟まった様な口調で淡々と話す里見。

「里見…貴女今日は特に意地が悪いですよ」

「わざとです」

何だか凄い茶番である(笑)

イヤ、コントにしか見えないそんな二人のやり取り。

ちなみにこの黄泉姫の素の顔を知る者は、里見以外ミセス・テケテケのみだったりする(笑)


その後…

里見に咎められ意地になった黄泉姫は月子達を見かけると、その場から逃げる様に無理矢理一緒に遊ぶのであった…











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