第7話 七人の座敷童

「では今から作戦会議を始めます」

静かに…

そして抑揚の無いそんな宣言が聞こえる…

そこには黒くて大きめのパーカーを頭からすっぽり被った人影が七つ…

周りはその影を総て包み込む様に広がるそんな闇の空間…

中は一本の蠟燭の灯りだけが寂しく…

そして小さく揺れていた…


「通例通り今回の議長は私、月子つきこが行います」

次に聞こえるそんな声…

火代かよ…」

「ハイ」

水樹みずき…」

「ハイ」

木亜きあ…」

「ハイ」

金菜かな…」

「ハイ」

土波つなみ…」

「ハイ」

「最期に日依ひより…」

「あ〜〜い♡」

厳かな点呼の中、一人場を崩すそんな返事(笑)


すると…

「貴女達…何をしてるの?」

文字通り暗闇を引き裂く様な光がその空間を照らすと、その中から透き通る様な声と共に一人の人影が映し出された!

「あ!おひい様〜(✕7)♡」

「おひい様ではありません、こんな庭先にテントなんか張って昼間っから何をしているんですか?」

なんとその人影の主は、この島を治める黄泉姫ヨモツヒメと呼ばれるあやかしの祖だった。


彼女はシャギーが入ったセミロングの銀髪を風に揺らしながら、テントの入口の部分を派手にめくると、呆れた様に中を覗き込んでいた。

その姿は…

胸元を大胆にはだけせせたかなり短めな着物…

下は黒のマイクロミニスカートに…

こちらも黒で妖艶なオイルストッキング…

そしてピンヒール…

ラメ入りのパールホワイトなピンクルージュがまた彼女の魅力を際立たせている。


「あのね、皆で《悪巧みごっこ》をしてたの〜♡」

そう言いながら着ていたパーカーを脱ぐ七人…

よく見ると皆七、八歳の女の子にしか見えない。

そしてそれぞれお気に入りの可愛い柄の着物をきていた。

「なんですかそれ(笑)」

「この間ポッポ君から貰った漫画にあったの〜♡」

「そうそう♪悪の大幹部達が集まって正義の改造人間を倒して世界を征服しようとするお話♡」

「けど最期は負けちゃって爆発するんだけどね(笑)」

「凄いんだよ〜こーーんな大きいロボットも出てくるの♪」

「怪人とか言うのも出てくるけど弱いだよ〜直ぐ負けちゃうし(笑)」

「だから負けない様な作戦を皆で立てようとしたの♪」

「それでね、後で改造人間の役をポッポ君とポチちゃんに頼んでしてもらう〜♡」

…また二人にリアクションに困る様な事をさせる…

※ちなみにおそらく、某変身ヒーローと悪の組織の事を言っているのだと思う(汗)


黄泉姫も同じ想いを感じえなかったのだろう…

各々楽しそうに話す皆の顔を見て、苦笑いを浮かべるしかなかった(汗)

「まぁ〜ホントに死なない程度に加減してやるのじゃぞ…それよりもそろそろお昼じゃ食堂に参らぬか?」

「ハ〜〜イ(✕7)」

黄泉姫の言葉に元気良く返事をすると、テントの後始末もせず足早にこの場から立ち去る七人。

そんな彼女達の後ろ姿を見送りながら彼女はふと…

『あれからもう一年か…』


その呟きは愁いを帯びていた。

あの七人…

彼女達は座敷童である。

実は向こうの世界で居場所が無くなったのだ。

皆それぞれ人一人住む気配のないボロボロに腐ちた屋敷に置き去りにされていた。

何年経ったのか?

それすら解らなくなっていても、それでも盟約によりその場から離れる事が叶わない運命さだめに泣きながら耐えていた七人…。

これが誰かが別の場所に連れて行っていればこんな事にはならなかった。

しかし色々な理由と偶然が重なりそれが叶わなかったのだ。


それが偶然とはいえ、ポッポ(あだ名)が取材の為に訪れた廃村で出会ったのだ。

…月子と…

一歩ポッポは漫画家です。


事情を聞いたポッポは自宅に帰ると直ぐに妻の八尺ハッちゃんにその話をした。

すると彼女は急ぎ島に戻ると黄泉姫に報告。

結果、島の住人達で動ける者を総動員して月子以外、同じ境遇の座敷童達を捜索して島に保護したのであった。

その七人なのだ。


当初盟約を破棄し島に保護しても警戒していたが、今では島のアイドル的な感じで黄泉姫と共に幸せに暮らしている。

まぁ〜ちょっと悪戯が過ぎる時もあるのだが…

被害者はポッポやポチのみだから好しとしよう(笑)

「おひい様〜早く行こう〜♡」

「ハイハイ待っておれ」

いつの間にかかなり離れた場所まで行っていた座敷童達…


そんな彼女達から急かされた黄泉姫は、微笑みながらそう告げるとその場から立ち去るのであった。








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