第4話

 ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君、ヒロ君!


 ヒロ君が勇者に殺される!?


 北の砦の自室、いくらサインしても減らない書類が詰まれた机を両手で叩き、私は椅子から立ち上がった。


「どうかなさいましたかな、黒騎士殿」


 丁度追加の書類を運んで来たノスが聞いてくる。


 もうどう見ても終わらない量が詰まれてるのに、まだ持ってくるなんて鬼にすぎる。いや、彼は一応モンスターか。


「出掛けてくる」

「どちらへ?」

「人間の国だ」

「何をしにですか?」

「偵察だ」


 本当はヒロ君に会いに行くのだが、当然そんなこと素直に言えるはずがない。


「偵察ならいつも通り闇烏がしております。貴方が行く必要はありません」


 闇烏は普通の烏にそっくりな見た目だが、簡単な闇魔法を使うことが出来るモンスターだ。


「遠くから観察するだけでは埒が明かん。我が潜り込み直々に内情を調べてくる」

「本気ですか? そんなことをして貴方にもしもの――」


 話してる途中のノスを睨むと、彼は口を閉ざした。

 思い出したのだろう。私にもしもなど存在しない程の力があることを。


 黙ったのを了承と捉え、私は足元に魔法陣を出現させる。

 転移の魔法陣である。


「お待ちください! 貴方にはまだ仕事が山積みですよ!」

「我が参謀ノスよ。後はお主に任せる!」


 それだけ言い残し、私は人間の国へと転移した――。

 

 お前も減らない書類の地獄を味わえ!




 バルディア王国の首都、王都バルディアの隅の方にある静かな一角。そこにある空き家に私は転移した。

 

 町中を全身真っ黒な鎧で歩くのはさすがに目立つと思うので、全身鎧は解除して黒いローブを纏う。町中には冒険者も多くいるため、この方が自然なはずだ。

 

 ただ、転生した私は種族が人間ではないためなのか、髪は銀色、瞳はエメラルド色と非常に目立つ容姿をしている。


 それを隠すためにフードを被るのだが……一気に怪しい人物に大変身だ。


 まぁ、いいや。とりあえず、これで行ってみよう。


 王都の中心部には壮大なる王城が鎮座しており、目的の場所はそこから少し離れたところにあった。


 冒険者ギルド。異世界冒険物の定番と言えばやっぱりここだ。

 中に入ると目的の人物はすぐに見つかった。


 こんなすぐに見つかるなんて……やっぱり私とヒロ君は運命の黒い糸で繋がってるのよ!


「やっぱりヒーラーは少ないね」

「そうだね~」

「しょうがねぇから三人で行くか?」


 ヒロ君の側には、勇者に対する態度とは思えない、馴れ馴れしい女と男がいた。


 どうやらパーティーを組んでどこかに行こうとしているようだが、ヒーラーがいなくて困っているようだ。


 これはチャンス!


「あの、すいません。私、ヒーラーなので同行させてください、勇者様」


 ヒロ君と他2名は振り返って私のことを見た後、声を揃えてこう言った。


「「いや、どう見ても魔術師でしょ」」

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