第6話
ダンジョン、ロキアの洞窟の中は普通に岩山にでもあるような、見渡すばかり岩肌の洞窟だった。
天井には蝙蝠が蔓延り、地面を小さな爬虫類が走り抜ける。魔族領にある洞窟に比べたら、特に面白味もないただの洞窟に見える。
そんな洞窟をしばらく進むと、先頭を歩くヒロ君が腕を広げて止まる様に合図して来た。
「まだ3階層だ。この辺りで出て来るといったら、ゴブリンあたりか?」
男がそう言うと、答え合わせでもするかのように、ゴブリンが歩み寄って来た。
私の生み出した照明用の光に照らされ、緑色の肌をした小鬼のような魔物が三体姿を現わす。手にはどこかの冒険者から奪ったのか、血に染まった剣や盾を身に着けている。
「三体か。僕が先に引き受けるよ」
「よし。その間に、俺達二人で一体ずつ仕留めるぞ」
「うん!」
「挑発!」
ヒロ君がゴブリンに向かってスキルを発動する。
あまり勇者っぽくないスキルだけど、他人を守りたいというヒロ君の思いがあるから、そのスキルを得たのだろう。
さすがヒロ君! 私も守られたい!
ゴブリンの攻撃がヒロ君に集中する中、女が弓でゴブリンの一体を攻撃する。攻撃を受けたゴブリンは挑発が解除され、女の方に標的を変更する。
だが、女はゴブリンの攻撃を軽々と躱し、その隙を突いて男が大剣でゴブリンを一刀両断した。
ゴブリンの断末魔が洞窟内に響き渡り、それを聞いた二体のゴブリンが同時にヒロ君に攻撃を仕掛ける。
「うわぁっ!」
受けきれなかったヒロ君が、盾を構えたまま洞窟の壁に激突する。その隙を見逃さず、同時攻撃で体勢を崩したヒロ君の頭上に、ゴブリンの一体が剣を振り下ろす。
ヒロ君が危ない! どうする? 私がやってしまうか!?
「ウインド・エッジ!」
女の放った風の魔法が、ゴブリンの剣を持った腕を切り飛ばす。
「うおぉぉぉぉッ!」
男がすかさずそのゴブリンに止めを刺す。
残りの一体は恐れをなしたのか、汚く情けない声を上げながら洞窟の奥へと走り去っていった。
「大丈夫かヒロト?」
「あ、うん。大丈夫だよベル。エナもありがとう」
「うんうん。私のお陰! 感謝しなよヒロト」
この女、図々し過ぎる!
「おいお前。ヒロトを治療しろ」
男はこちらを見てそう命令口調で言ってくる。
当然ヒロ君の治療はするけど、こいつに命令されるのは非常に不愉快だ!
「勇者様、治療します」
右手をヒロ君にかざして治癒魔法を発動する。ヒロ君の体が緑色の光に包まれ、痛みに顔を歪めていたヒロ君の表情が、穏やかなものへと変わっていった。
「へぇ~。詠唱無しで使えるなんて、言うだけのことはあるね」
女が感心したように言ってくる。が、そんなことを言われても許す気はない。
先に進めばもっと強い魔物が出てくる。どさくさに紛れて殺すチャンスはまだまだあるはずだ。
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