魔王軍最強の黒騎士様は最恐ヤンデレ少女(仮

彩無 涼鈴

第1話

 私がこの世界に転生してどれくらい経っただろうか……。


 今日もまた、攻めてくる勇者を容赦なく殺していく。この世界の人々とは違う、どこか懐かしさを感じる容姿の勇者。そう、彼らは日本から異世界召喚によって呼び出された人達だ。


 この世界に転生した私は感情を置き忘れてしまったのか、元日本人だと理解しつつも躊躇なく殺して行った。その成果が認められ、今では8人いる魔王軍幹部の末席に加えさせてもらっている。


「聖なる光の帳にて、魔に呑まれし者の力を封じたまえ――ホーリー・ベール!」


 白いヒラヒラした服に身を包んだ勇者の仲間の女が、神聖魔法にて私の周囲に聖なる壁を顕現させる。


「諦めて下さい。この魔法は魔族の力を百分の一に下げます」


「魔王軍幹部、黒騎士。今ならまだ投降を許そう」


 勇者の隣にいる中年の魔術師がそんなことをのたまった。


 全ての人々は私のことを黒騎士と呼ぶ。小柄な少女の姿では舐められることは分かっていたので、全身を黒い鎧で覆い隠し、武器には黒い大剣を用いている。ついでに、声も低く渋い男性の様にし、身長も180センチくらいの長身に見せている。


「笑止。われが投降する事など無い」


「そう言うと思ったぜ! なら、これで終わりにしてやる! 魔を裁く力を我が聖剣に――断罪の聖剣!」


 勇者の握った剣から白く輝く刃が放たれ、それは私の黒き鎧に触れて消滅した。


「なッ! 勇者様の裁きの刃が!」


 やはり未熟な勇者は弱い。


「ダークブレイド」


 可視不可能な速度の黒い刃を放つ。反応どころか、それに気付く事すら出来ない勇者は、何が起きたのか分からないまま体を上下に分断され地面に倒れた。


「ゆ、勇者様! 早く蘇生を!」


 神聖魔法の使い手は、必ずと言っていい程蘇生魔法を扱える。死んでも復活出来るというのは、戦闘においてかなり優位である。


 だが、そんなこと見す見す許すわけがない。


「ダークフレイム」


「キャァァァァァァァッ!」


 黒い炎に飲まれ女が悲鳴を上げる。 


「こんなもの! ウワァァァァッ!」


 魔術師の男が炎を消そうと女に近付き、炎はまるで意思を持っているかのように近付いた男に燃え移った。


 そして、黒き炎に焼かれた者は、骨まで残さずに燃え尽きて消滅した。


「さすが黒騎士殿。見事な手際です」


 全てが終わってから話しかけてくるのは、魔王の直属の部下であるノスだ。杖を持った小柄なモンスターのような姿をしているが、実際強いのかどうかは謎だ。


「勇者が弱すぎるだけだ」


 これは傲慢ではない。勇者は大してレベル上げをせずに前線に送り込まれる。それは、この世界の中心が魔王軍に占拠されていて、それを取り返そうと人間達が必死になっているから。だが、魔王軍の幹部は勇者であっても低レベルで勝てる程弱くない。結果、送り込まれる勇者は次々と殺されていく。だけど、人間達は勇者を送り込むのを止めない。


 異世界から召喚した勇者を――。

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