最終話 七年後
七年後
「茜! 久しぶり!」
「はい。お久しぶりです!」
飛行機から降りて空港に着くと茜が駆け寄ってきた。
大学は二人とも別の大学に進み、直線距離で三百キロほど離れていたので頻繁に会うことはできなかった。大体二ヶ月に一回ほどの頻度で遠距離恋愛をしていた。
茜が盗られないか心配になり、結構な頻度でやってくるナンパ系の女性を退けながらも無事法科大学院を卒業し、たった今東京に降り立った次第だ。
「うーん、他の女の人の匂いはしませんね。よかったです」
抱きついてきた彼女はしばらく顔を埋めたあと満足げに頷いた。
「そりゃな」
「でも、大樹君もてたでしょうから……」
「全部断ったし、茜が一番好きだからな」
「そうですか……よかったです」
「茜、髪切ったんだ」
高校を卒業してから、茜は高校入学当初の見た目になった。つまり髪の毛を伸ばし、眼鏡をかけた例の姿だ。
とはいえ完全に逆戻りしたわけではなく、色々ちゃんとケアした上らしい。なんで例の姿に戻ったのか、茜曰く『この見た目なら男の人も言い寄ってこないでしょう。私は弱いので押されたら負けちゃいそうなので』だそうだ。
よかったです。お互いに浮気なんてしていなくて。できれば同じ大学に行きたかったですが、お互いの将来の夢は違いますから。私は大樹君の枷になりたくないですし、大樹君が原因で夢を諦めたくなかったので、この選択でよかったです。
一旦大樹君は私の家に荷物を置きました。
「じゃあ、早速見に行くか」
実を言うと、私の苗字はもうじき『草宮』になります。半年前くらいに大樹君にプロポーズされちゃいました。えへへ。
大学ではそんな気配を出さないように指輪はペンダントにしていましたが、今はもう堂々と左手薬指に嵌めています。
あ、大学といえば頑張ってお友達をたくさん(十人)作りました。あとちゃんと修士課程も取りました。
あ、そうそう。大樹君の言った『見に行く』ですが、なんと、一緒に暮らすことになりました。ですので今からその物件を見にいくのです。
「結構いい感じだったな」
「ですね」
夕暮れ、二人で道を歩く。これからしばらく茜の部屋で暮らし、春先から例の物件で同棲生活を始めるのだ。
「大樹君、今日なんですけど、お酒飲んでみませんか?」
恋人繋ぎで歩いていると左から話しかけられる。
「確かに茜と飲んだことはなかったな」
「私は今まで飲んだことありませんね……」
「え、まじか」
「ちょっと酔ったときに何をしでかすのか怖くて試せてないんです」
「あー、なるほど」
じゃあ、と二人はスーパーに向かう。特に筋道だった話題があるわけでもない、そんな二人の会話。
きっと二人はこうやってのんびり生きていくのだろう。
春の夕暮れの暖かい風が、歩く二人の背中をそっと撫でた。
『隣の席の地味子さんが思った以上に魅力的で惚れてしまうんだが』【完】
──────────────
あとがき
いやー、完結!最後の方はかなり駆け足になっちゃいましたが、まあなんとか無事に描き切れたかなと思います。
みなさんいかがだったでしょうか。今年の3月くらいに思い立った作品、高校受験が終わって余裕ができたから書いてみようと言うことになって書き始めました。初めは駄作かなーと思って投稿開始しましたが実際は多くの方がこの作品に触れてくださりました。ありがとうございます。
唯一の後悔としては登場人物を全員活かせ切れなかったなと。
大樹のお母さん(侑芽華)は終盤ほぼ空気ですし、伯母である流美もあんまり出せなかったなと。ついに登場せずじまいだった大樹の父律基……
第三章前編で修学旅行にめっちゃ言及しておいて本編に修学旅行編は入れてないという……ごめんよ国崎リズちゃん。名前だけ出しちゃって……気が向いたら修学旅行編書くからね……
まあ長々と後書きを綴っていてもしょうがないのでここらで切らしてもらいましょう。
最後に、この物語を最後まで読んでくださった皆様と、執筆活動に行き詰まった時に助けてくれた方々、ストレス解消になった睡眠に大きな感謝を込めてこの場を閉めさせていただきます。
カクヨムコンにも参加するのでぜひ応援よろしくお願いします!
是非とも『星』や『フォロー』をよろしくお願いします!
では、またいつか会える日まで
「この場面SSが見たい!」っていうのがあれば遠慮なく教えてください! 書きます!
地蔵くまねこ
【完結】隣の席の地味子さんが思った以上に魅力的で惚れてしまうんだが 地蔵くまねこ @yakurabe
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