第67話 交叉する運命

 クラーケンを素体にし呼び出したハクアは二隻の軍船を嘘偽りなく海の藻屑と化した。正直な所、海の上ではまさに覇者であり実力は本物で頼りになるのだが、ポポ曰くじゃじゃ馬娘のためあまり無茶はさせない様に気をつけていかなくてはならない。


 そして敵対して来た五隻の軍船を無力化し終え、ホッとする間も無く都市部から大きな爆発音が聞こえてくる。合流したドレーク達を労うと、これからどうするか少し話し合う。


 「ドレーク、ナギ、ヤエご苦労様。無事無力化出来た様で何よりだね」


 「お役に立てて光栄です。しかしまだ気になる二つの懸念があります、一つは捕虜にした者達はロズライ連合国の者かどうか。もう一つは、都市内部から発生したと思われる爆発音。元々ここは帝国のものでしたが、この惨状を見ると違う国に占領されているのは間違いないかと」


 「ふむ、まだまだ分からないことが多いねぇ。そういえば襲いかかってきた者達の言葉はやはり分からなかった?」


 ドレークはその通りだと肯定し、やはり帝国の者ではない事は確かな様だ。こちらを攻撃して来たのだから、都市内を威力偵察しても良いかもしれない。さすがにハクアは陸には上がれないので海で待機してもらう事になるが、他の眷属達がいれば問題ないだろう。


 「なら、ハクアは海で待機してもらって警戒していて貰おう。他の皆は都市内に威力偵察と行こうか、何が起こっているのかも気になるから把握しにいこう」


 ハクアは少々物足りない様子ではあるが、納得してくれたようで他の眷属達で上陸をしていく。煉瓦作りの倉庫らしきものは、大砲で破壊されたのか崩れ落ち破片が辺りに散乱している。先程無力化したガレオン船らしきものがこの港に向かって打ち込んだのだろう。普段なら住民が大通りにいてもおかしくないのだろうが、見当たらない。

 そのまま駆け足で音がする方向へ向かうと、さらに爆発音や怒号がこちらまで聞こえる様になる。そして進むにつれ、敵対勢力がこちらを見つけるや否や攻撃してくるものまで増えてくる。ドレーク達が無双してくれるお陰で問題無く済んでいるが、帝国を負かした国だから侮ることは出来ない。遭遇する敵は大砲はない代わりに銃があるようで、狙われない様に気をつけるが眷属達にとっては問題ない様である。

 

 「主人、あそこにいるのは第七騎士団ではないでしょうか?」


 ドレークは急に立ち止まると500m程先のある一点を指差す。その先には以前見たこともある、フルプレートを着込んだ第七騎士団が敵対者と対峙しているのであった。さらにその先頭には見覚えのある姿を確認する事が出来たのだった。


 「おや?こんな事ってあるんだね、あそこにいるのはうちの傭兵のザルバローレ、隊長のムーラムと兵隊もいるし、いやはやこれは運命なのかな?」


 銃の集中放火に対して、防御を固めてゆっくりと前進していく第七騎士団。フルプレートアーマーと盾を構えると銃の攻撃はどうやら防げる様で、大砲や魔法が無ければこの布陣は崩れ無さそうだ。

 しかし、ガレオン船に積み込んでいた大砲は陸上用や、城壁にも配備されている様で防御態勢を取っている第七騎士団に向け打つ度に爆発音が鳴り響き、倒れ伏して行く。大砲は魔法と同じ効果を出せる優れもので、費用は勿論かかるが魔法使いの代わりとなる。第七騎士団は丁度密集していたため、大砲の餌食になってしまうが、まだ士気もあるようで逃げる兵士は見当たらない。


 「ヤエ、あの城壁にある大砲だけど操作手を無効化して来てくれる?ドレークとエルジュは突貫し第七騎士団を援護するようにナギは待機で」


 「「「御意」」」

 

 眷属達はこちらの指示を聞くと、すぐに行動を開始する。一番速度が速く風魔法が使えるヤエは縦横無尽に駆け巡りすぐに城壁上まで登っていってしまう。

 また、ドレークとエルジュもかなりの速さで駆け抜けると、敵対する者の側面から奇襲をかけ容赦なく打ち倒していく。先程までの劣勢はどこへ行ったのか、眷属達が参戦すると状況は一変する。


 「お、おい!まさかあの姿はドレーク殿とエルジュ殿ではないか!!!まさか聖樹国が来てくれたのか?」


 昔第七騎士団とは一緒に行動していたため、一般兵士にもよく知られていた。なんせ第七騎士団全員に竜眼をあげたのだから、末端の兵士も言葉も分かるようになっていて友好度も上がっている。


 そして側面から抜けたドレークは、なんと先頭に陣取っていたザルバローレ達の元に行くと久しぶりに口を出す。


 「助けはいるかね?」


 「お、おいおいおい…マジかよ!?なんであんたがここに?って今はそれどころじゃねぇ、助太刀たのむ!」


 ドレークは頷くと、すぐに反転し敵対勢力へと飛び込み薙ぎ倒していく。城壁上に配置されていた大砲もヤエにより抑えられ、脅威はかなり少なくなった。


 その様子を見ていた第七騎士団は、息を吹き返すように防御体制から攻撃へと移行していく。


 「皆!強力な援軍が到着した今こそ攻めていくぞ!突撃せよ!」


 後方に位置していた第七騎士団団長でガリバリアル帝国第3皇女でもあるサナリー=フレイフルが勝機を感じ取ると、すぐに突撃指示を出す。敵対勢力は不意をつかれたように形勢は遂に逆転し、次々と打ち倒していくのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

転生先は絶滅危惧種のドラゴン様!?〜世界樹に寄生されてますがこの先生き残れるのか〜 カッチョ @kaccho

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ