第70話 おかげ横丁1
未来達は今日はお伊勢参りに行く事になっている。
「んー、おかげ横丁の食べ歩きが楽しみだな」
「もう、昨日は明日も海で遊びたいって言ってたのに」
「なんのことかにゃん?」
惚けるように首を傾げた虹花の姿に、悠里はため息を吐いた。
海で遊ぶのが楽しかったらしく、昨日は子供のように帰るのをしぶり「明日も海に行こう?」と予定の変更を提案していたのに、朝起きればこの様子の気分屋な虹花であった。
「まだ夏休みは長いんだし、海にはまた行けるからね! 宿題も終わったし!」
特に機嫌が良いのは、昨日未来に見てもらって宿題が終了したのと、その時に妃子に「これで遊び放題ね」と言われ、海はいつでも行けるし伊勢神宮の横にはおかげ横丁という食べ歩きスポットがある事を教えてもらった事で態度が180度変わったのであった。
どうやらおかげ横丁の存在を知らなかったようで、伊勢神宮へのお参りだけだと思っていたようである。
ダンジョンの門が出来ているので伊勢神宮がどこまで入れるのかは分からないが、妃子が調べた所内宮参拝とおかげ横丁の食べ歩きには影響は無いみたいだ。
4人は準備ができるとバスで伊勢神宮の方へと向かうのであった。
三重県に来て、伊勢志摩鳥羽辺りの旅行ならば観光地へ行くのは似てくるものである。
昨日未来達とトラブルを起こした大学生グループも、おかげ横丁へやって来ていた。
昨日はあの後もナンパに失敗して、何故か伊勢神宮で縁結びのお守りを購入してのおかげ横丁でナンパリトライである。
「しかしよ、今日のあれは凄かったよな」
男の1人が大きな胸の形をジェスチャーで作った。
「お前は巨乳好きだよな。おれはあの真面目そうな子のが好みだったぜ」
「お前らは甘いな。後から来たモデルみたいな金髪中だろう」
「でも、それを全部あのパッとしない男が独り占めとか腹立つぜ」
「やめよう。失敗したのに虚しいだけだ」
男達は揃ってため息を吐いた。
「でもよ。別に女は他にもいる。昨日は失敗したが、今日は準備万端だ!」
「そうだな。さっきおかげ横丁でかわいい子見たんだよ」
「な、先に言えよ! お守りより先にナンパだろ!」
男達は、懲りずに強引なナンパを開始する。
女性に声をかけて、しつこく付きまとう。
「なあ、俺らと遊ばね?」
「俺らと仲良くなっといた方が徳だよ? コイツ有名人。ステータスのランク見てみ? 井尻真斗ってのがコイツ!」
声をかけられた女性はあからさまに嫌な顔をしていてもお構いなしだ。
そんな時、おかげ横丁に悲鳴が上がった。
お土産袋を、山から降りてきた猿がひったくったのだ。
その後の逃走ルートに、男達は居た。
「猿がうぜえんだよ。俺らが守ってやるからこの後どっか行こうな?」
男はSNSアプリで、外国で猿を追い払うような動画をみた事があった。
意外と強気に出れば簡単に追い返せていたように思う。
それに、男に動物愛護の精神はない。
向かってきた猿を男は動画で見たように蹴っ飛ばして追い払おうと思い切り蹴る。
しかし、猿はそれに怯む事なく、歯を剥き出しにして怒りながら男の蹴りを受け止めた。
そしてそのままキーキーと鳴きながら男を投げ飛ばす。
男は声を上げながら店の壁に激突して気を失ってしまった。
「お、おい、大丈夫かよ!」
「猿ってこんなに凶暴なのかよ?」
勿論普通の猿に人を投げ飛ばすなんて芸当はできない。まるで腕力を強化されたかのような、特殊な猿であった。
猿というのは学習能力が高い。
自分が強いと分かれば調子にのる動物である。
猿は、歯を剥き出しにして威嚇して、近くにいた人間の荷物を狙って飛びかかった。
「あんた、井尻とかってランカーなら追い払ってよ!」
男達は荷物を持っていなかった為、ナンパしていた女性へ猿は向かう。
女性は男達に助けを求めるが、本当はスキルなど持っていない男達に助ける術はなく、友達が投げ飛ばされたのを見てビビって助けようともしない。
女性は仕方なく自分のバッグを猿に投げた。
猿は、威嚇して飛びかかれば荷物を奪える事を学習してしまい、おかげ横丁の騒ぎはどんどん大きくなっていくのであった。
ある日、世界に出現したダンジョンは、開門前にバカスカ敵を倒した僕のせいで難易度が激高したらしい。 シュガースプーン。 @shugashuga
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ある日、世界に出現したダンジョンは、開門前にバカスカ敵を倒した僕のせいで難易度が激高したらしい。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます