レオンの受難
相有 枝緖
レオンは念願のアイテムを手に入れた!
冒険者として生活を始めて2年目にして、レオンは憧れだったアイテムボックスを手に入れた。
様々な依頼をこなし続け、ようやく手に入れたアイテムボックスは箱型で、それなりに大きさのあるものだ。
部屋に設置するタイプで、持ち歩きはしない。最近はあまり流行らないらしいが、製造の手間は変わらないので需要が減っても値段はお高いままなのだ。
実は、持ち歩けるタイプのアイテムボックスはすでに持っていた。
しかし、小さい分容量が少ないし、魔法で繋げば箱型の方にアイテムを転移させられるので、何かあったときにも安心できる。何より、持ち歩く方は親からもらったお下がりなので、箱型のアイテムボックスを「自力で手に入れた」という達成感は大きい。
そしてレオンにとっては、独り立ちした冒険者の象徴であった。
レオンの実家は少し離れた町にある。
なんてことはない普通の家庭だが、両親ともに冒険者をしていた経験があり、レオンもその話を聞いて育ったので憧れがあった。
その名残か、両親はそれぞれに箱型のアイテムボックスを所持していた。
借りることはあったが、やはり自分のものではないので遠慮があった。強請って手に入れた箱型のアイテムボックスは、デザインもお洒落で両親のものよりずっといい。
レオンは、手に入れた箱型アイテムボックスを眺めて悦に入るのが一日の終わりの習慣になっていた。
ピコン。
突然、スマホが鳴った。
大学の課題のレポートをまとめていた晴太は、チャットアプリの通知に表示された「母」の文字を見て首をかしげた。
特に何か連絡した覚えはないし、帰省もまだ先の予定になっていて、食料品は先週送ってもらったばかりである。
何かあったのかな、と4桁の数字を叩いて画面を表示させ、そのメッセージ内容を読んだ晴太はテーブルに頭を打ち付けた。
『メールの下書きをメモに使うのはすごくいい案だと思うけど、宛先を入れておいたら事故るわよ。ていうか事故ってるわよ。レオンは冒険者なわけね。ていうか、バイトしてパソコン買ったのね。いいじゃない、便利よね。でもパソコンはアイテムボックスっていうより魔導書とか鑑定魔法的なものじゃない?』
母は、チャットでも晴太の黒歴史を容赦なくえぐっていった。
レオンの受難 相有 枝緖 @aiu_ewo
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