🥊What’s Boxing📦❓❗️

土岐三郎頼芸(ときさぶろうよりのり)

全1話 What’s Boxing?!

「サブロウ先生、質問があります!」


「おお、ボクシング部の三分一(さんぶ・はじめ)じゃないか。どうした?」


「そのボクシングについて教えて欲しいことがあるんです」


「ふむふむ。言っておくがオレは美術教師だが、実戦的な技ならボクシング部顧問の山本先生よりも詳しいぞ。ゼロ距離の肘打ちとか金的攻撃とかカーフキックとか毒霧とか暗器とか」


「全部悪質な反則じゃないですか! そしてなんですか最後の暗器って!」


「暗器とは隠し武器のことだ。相手に見えないように持って油断させておいてブスリと刺す」


「犯罪じゃないですか! 僕をボクシング界から永久追放にする気ですか!」


「じゃあ、なんでオレのところに来たんだよ?」


「ボクシングの技ではなくて、ボクシングの名前の由来について聞きたいと思って。サブロウ先生ならそういう無駄な知識に詳しいって、山本先生が言ってました」


「おのれカズマの奴め。面倒だからってオレに押し付けたな。わかった、わかった。じゃあ言ってみろ」


「早速ですが、ボクシングって英語でBoxingじゃないですか」


「そうだな」


「これってBoxがつくけど箱という意味のBoxとナニか関係があるんでしょうか?」


「相手をボコボコに殴ることを『殴り』というところからとってBoxingと名付けられた」


「ええっ! そんなバカな!」


「と言うのは冗談だ。だいたいボコボコに殴ることは『殴り』ではなく『殴り』だろうが」


「サブロウ先生、真面目に答えて下さいよ!」


「いやさっきの話も半分本当なんだよ」


「どう言うことですか!」


「ボクシング協会とかウイキペディアではいきなり古代ギリシャ語のPUXOS(箱)やそのさらに語源となるPUGME(握りしめた拳)や、拳で戦うという意味のラテン語PUGILATUSを持ち出して説明しているけれど、Boxと言う単語の響きからは遠過ぎるとオレ思うんだよ」


「そうですね」


「オレの知る別の説では『打撃』を意味する西暦1300年頃のゲルマン諸語の名詞由来を唱えていて、そっちの方が説得力があるんだよ」


「具体的にはどんな単語なんですか?」


「中世オランダ語のboke、中世高地ドイツ語のbucやデンマーク語のbask、こっちの方がBoxに近いじゃないか」


「たしかに」


「そしてこれらの言葉はどうやら擬音語とか擬態語がら来てるんじゃないかと言われている」


「どういうことですか?」


「日本語でもあるじゃないか。ポクポク叩く、ポカポカ殴る、ボコボコにするって。つまりモノを叩いたときの『音』から『打撃』を意味するような単語が生まれたんじゃないかということ」


「ああ、なるほど」


「加えて『箱』状のものを叩けば大きな音がするだろう? だからこれらの『打撃』を意味する言葉と『箱』を意味する言葉とが関係があると言う説もある。だから、本当にボコボコ殴る『殴り(笑)』からとってBoxingとなったと言えないこともないんだ」


「そこはなんだかウソくさいですけど」


「世の中は広い。お前が思いもよらない事はいくらでもある。例えばお前は高校ボクシングでは負け知らずだが、オレはお前が手も足も出ないほどボクシングが上手なウチの女子生徒を知っているぞ。しかもなんと美術部員だ」


「サブロウ先生、それは聞き捨てならないです。いくらなんでもありえないでしょう」


「ウソじゃないぞ。もしお前が彼女にボクシングで勝ったら焼肉食べ放題を奢ってやろう。お前が負けたらウチの美術部員にケーキを10個奢ってもらおうか。どうだ、三分(さんぶ)、この勝負受けるか?」


「僕は舐められるのは嫌いなんで、もちろん受けますよ」


「よっしゃ、勝負成立だな」












「はい。これでフィニッシュです。わたしの勝ちですね」


「よし、でかしたぞヨシノ! これは誰がどう見ても、圧倒的にヨシノの勝利だな。スピードも技術の正確さも全てヨシノの方が上だ」


「バカな! こんなバカな! 汚いです! サブロウ先生!」


「ナニを言う。ヨシノはなあ、ケーキ屋さんでアルバイトしているからな。ケーキの箱詰めは慣れているのさ」


「🥊ボクシングの勝負って言ったじゃないですか!」


「ああ言ったさ。Boxing (ケーキ🍰を箱に詰めるコト)の勝負だ。ケーキ🍰を素早く美しく箱に詰めた方が勝ちだ。Boxと言う動詞には📦箱詰めをすると言う意味もあるのさ。ウヒャヒャヒャヒャヒャ」


「くっそ〜!」


「それともお前はまさか女子生徒をど突くつもりだったのか? そんなハズないよなあ? さあみんな、ケーキ🍰を奢ってくれた気前のいい三分(さんぶ)君にお礼を言おうじゃないか」


「「「「三分(さんぶ)君ありがとう〜」」」


「よかったなぁ三分(さんぶ)、モテモテじゃないかぁ」


「だけど、とっても悔しい〜!」


 こうして三分一(さんぶ・はじめ)は勝負には、駆け引きやずるさも必要なことを学んだのであった。

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🥊What’s Boxing📦❓❗️ 土岐三郎頼芸(ときさぶろうよりのり) @TokiYorinori

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