なんでも入る箱

護武 倫太郎

なんでも入る箱

「なあ、美香。そのへんに置いておいたマーブル模様の箱知らない?」

「え、知らないよ。てか、掃除してって言ってもしないから、無くしたりするんだよ」

「いや、まあそうなんだけどさ……」

「何か大事なもの入れてたの?」

「いや、ゴミ箱みたいなものだよ」

「ふーん。良太変わったね。ゴミ箱なんてなくて良いって言ってたのにね」

「ちょっとした心境の変化というか?そんな感じよ」

「ふうん?ところで、箱といえばさ、最近流行ってる箱って知ってる?」

「箱?流行ってる?どういうこと?」

「あれ、良太知らない?最近SNSで話題になってるんだよ?なんでも入る箱」

「なんでも入る箱?そんなのあるんだ。知らなかった……」

「そうなんだ。その箱ってさ、話題にはなってるのにどんな見た目なのか不明なんだって。写真に撮ろうとしたり、動画に写そうとすると、死んじゃうんだって……」

「おいおい、急にホラーじゃん」

「そうだね……。ところでさ、沙織っていたじゃん。良太にちょっかい出してた……」

「あ、あぁ……」

「その子がさ、手に入れたんだって」

「……何を?」

「……」

「そういえばさ、最近おしゃれな店見つけたんだ。今度一緒に行こうぜ」

「……誰と一緒に見つけたの?」

「いや、誰とっていうか。あれだよ、大学の後輩から聞いたっていうか……」

「後輩って、沙織?」

「……」

「大丈夫。もう言い訳しなくて良いよ。沙織から全部聞いてるから」

「なっ、沙織がバラしたってことか?」

「うん。全部自慢気に話してきたよ。愛し合ってるんだって?美香のことなんて捨てたんだって?」

「違う。そんなわけないだろ?沙織とのことが遊びなんだ」

「いいよ、もうそういうのは。少し黙ってて」

「……」

「なんかね、捨てられるのって嫌じゃん。だから私から捨ててやろうかなって」

「おい、その手に持ってる箱なんなんだよ?」

「なんでも入る箱だよ。中にぐちゃぐちゃに沙織もしまってあるから、一緒に入れてあげるね……」

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